小豆沢墓苑の現地レポート

■屋内霊園設立の経緯
　今でこそペットも一緒に入れる墓は市民権を得ているが、同苑がオープンした6年前にはまだ珍しい存在であり、しかも、屋内霊園という形態もかなり特殊なケースとして捉えられていた。企画当初より、他にはない形態の墓を作ろうという趣旨で事業を立ち上げたのかと尋ねると、「この地で事業を行うということがまず前提にあり、地形に合った形態は何かと考えた結果が屋内霊園になったのだ」と鈴木住職は話す。
「元々この土地は、食品関係の会社の倉庫があった場所であった。前面は道路であるが、背景に小豆沢公園の切り立った高い断崖を控えるという土地であるため、平面的な外墓地にはそぐわない地形だと感じた。いろいろと試行錯誤した結果、屋内霊園という形態で立ち上げることを決断した。また、今やペットは家族同然のように大切に飼われてきている。家族であるならば、例えそれが動物であっても命の尊厳は同じであり何も線引きする必要はないのではないかと考え、ペットも一緒に埋葬できる形態の墓にしようと当初より考えていた。
このペット共葬墓を建立する段階から、将来的には核家族化問題を睨みながら永代供養墓を建てることも既に想定しており、時期を見て開発を手掛けていく計画を立てていた。『ペット共葬墓・永代供養墓』を両者取り揃えるというのは、要望に合わせてチョイスできる選択肢を増やしておきたいという思いから生まれてきたもの」

■ペット埋葬墓所設立の経緯
　当初よりペットを埋葬できるようにしたことに関しても、ペットブームに乗じてその恩恵にあずかろうなどという気持ちは一切なく、「施主様の立場になって考えた結果である」のだという。
「寺の檀家さんから『お墓に猫を入れられないか』という相談を受けたことがあり、その時は他の檀家さんのお気持ちを配慮しお断りしたのだが、当初よりペット受け入れ可能であるとうたっていれば問題はないであろうと考えた」
　一般の方々を対象にしたアンケート調査を行うなど具体的な準備に取り掛かることとなった。
半年間もの時間を掛けて、街頭調査やグループインタビューで約3,000人以上、電話アンケートで1,300件以上のデータを収集したところ、68％の方が『ペットとの埋葬に抵抗なし』という結果になった」
　この結果に自信を持ち開発を進めていくことになるのだが、中にはペットは抵抗があるという方もいらっしゃるため、「ペット埋葬不可の区域も設けるようにした」という。
「ペット埋葬が可能か不可能という墓所選びも、ひとつの選択肢として考えていただけると有り難いと思っている」

■永代供養墓の建立
　同苑では2年前に永代供養墓を建立することになる。要請が高まってきたことにより、そろそろ手掛ける時期がきたと判断したのだと鈴木住職は話す。
「『永代供養墓はあるのか』というようなお問い合わせを、お電話やハガキでいただくようになっていった。設立当初より永代供養墓の建立は、いずれは必要になるであろうと思い状況を見ながら考えていこうと計画の中に入れていたが、こうしたニーズの高まりや社会的な状況の変化などを鑑み、事業をスタートさせるタイミングが来たと判断した」
　種類は4種類、5パターン。「無量寿」は個別石棺で、50年忌、ないしは100年忌後に合葬される（100年：87万円、50年：67万円）。「宝珠の和・絆」は納骨棚に骨壷で安置し33回忌後に合葬される（57万円）。「宝珠の和・縁」は納骨袋で合葬される（30万円）。「有縁」は2名用となり、骨壷で2霊目の埋葬者が33回忌を迎える折に合葬される（158万円）。
また特徴的なこととしては、同苑の永代供養墓は、事業主体である清岸寺の宗派である浄土宗で祀られることが前提となる。
「清岸寺が永代にわたり供養していくという責務を負っているため、宗派は浄土宗とさせていただいた。浄土宗の方はそのままに、また、別の宗派ではあるが特にこだわりの持たない方に関しては、浄土宗に変えていただくようお願いをさせていただいている。このことは私どもが、御魂をお守りしていくという覚悟の現れでもある」
　私どもは帰敬式で戒名をお渡しし、法要もさせていただき、さらには彼岸や盆には合同供養祭まで開催させていただいている」