競合時代を迎えた永代供養墓の今、そしてこれから

競合時代を迎えた永代供養墓の今、そしてこれから

 
1957年から続く公益財団法人日本デザイン振興会主催の「グッドデザイン賞」は、商品・製品ばかりでなく建築、ソフトウエア、システム、人の活動など広範囲を対象としています。
そんな2017年度のグッドデザイン賞金賞及びベスト100の一つに、ある永代供養墓が選ばれました。
 
一般的なお墓として、3段に積み重ねられた石造りのものを思い浮かべる方は多いでしょうが、そのお墓は形状からして特徴があります。
「&(安堵)」と名付けられたこのお墓の素材は白い大理石。直径20cm、高さ120cmの円柱型で、この中に2人分の遺骨が納められるようになっています。
 
お墓の概要として「ふたりで入る専用のお墓」、また「その関係は問いません。(夫婦、恋人、友人、同性同士等)」とあって、LGBD(レズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダーなど性的少数者)の方々にも配慮しているとのことです。
 
従来のお墓と言えば、先祖代々から引き継がれ家族単位で入ることが一般的ですが、なぜ2人単位のお墓が生まれたのでしょうか。
この永代供養墓をつくった證大寺(東京都江戸川区)の井上住職は、さまざまな事情から籍を入れられないカップルの「死んだら一緒になれない。入れてくれるお墓がないから」という悩みを耳にし、新しいタイプのお墓の必要性を感じたといいます。
 
グッドデザイン賞審査委員の評価コメントには「ソーシャルな視点からシステムとしてのデザインを切り拓いたことが素晴らしい」とあります。
樹木葬など、友人同士で同じ区画に入ることができるお墓はこれまでもありましたが、家族形態や死生観など社会の変容を捉え、戸籍上の家族ではない2人が死後も一緒に、という明確なコンセプトから制作された点が評価されたようです。
 
ところで「&(安堵)」は、2016年度の朝日広告賞(朝日新聞社主催)の不動産・金融部門賞にも選ばれています。こちらはお墓のデザインではなく、広告が受賞しています。
 
その広告を見ると、中央に大理石でできた円柱型の「&(安堵)」の写真があり、右上には白抜きで「死んだら、ふたりで 生きていく。」のキャッチコピー。全体の色が白とグレーで統一された、非常に洗練された印象を受けます。
この広告にはもちろん、プロの広告会社やコピーライターが制作に携わっています。
 
そもそも「&(安堵)」の制作にはその企画段階から、デザイナーや一級建築士が関わっています。
寺院がお墓をつくるにあたり外部のプロの力を借りることはあっても、その概念から立ち上げ、それをデザインやシステムにまで結びつけてこのようにオリジナル色を打ち出すまでのケースはまだまだ少ないように思います。
 
継承者を必要としない、いわゆる「永代供養墓」が注目されたのは80年代後半のことでした。
 
その端緒となったのが1989年に開設した、新潟県の妙光寺の「安穏廟」でした。この永代供養墓は個別の区画を設けた集合型墓所でしたが、その形というより、契約者に承継者を求めず、宗派を問わないこと、また会員制を導入し会費を基に運営するなど、それまでの常識や慣習にとらわれない特徴が話題となりました。
また同じ年に建立された東京のすがも平和霊苑内の「もやいの碑」もまた、檀家制度を基盤としない会員制の共同墓地でした。
 
その後、こうした今までにないお墓のあり方の提示に他の寺院や地方自治体も大きな影響を受けることとなりました。
また少子化、核家族化が進むなか永代供養墓のニーズは高まります。その数は増え続け、こちらの姉妹サイト『いいお墓-永代供養墓版』には、現在1000カ所以上が掲載されています。
お寺や霊園が積極的に設置するようになり、もはや永代供養墓は「特別な」「珍しい」お墓ではなくなりました。
 
運営する寺院にはコンサルタント会社を通じ、広告の効果的な打ち出し方を探るところもあります。契約者同士の生前交流の機会をつくったり、仏教や終活などの勉強会を開いたりといった環境作りに力を入れるところもあります。
 
永代供養墓が新しいお墓のスタイルとして登場してから約30年。いかに消費者にとって魅力のあるお墓をつくるか、そしてその特徴をどのようにアピールしていくのか-。
「永代供養墓をつくったから売れる」という時期はとうに過ぎ、それぞれが競い合う時代が訪れています。そんな背景からして「&(安堵)」のように外からの視点を積極的に取り入れる動向は加速していくのかもしれません。
 
どちらにせよ、その制作過程で私たちのニーズは確実にくみ取ってもらえるのか、そこにお墓の新たな価値観を生み出せるのか-。そんなことにも注視していきたいと思っています。
 
柿ノ木坂ケイ
 

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柿ノ木坂ケイ プロフィール

プロフィール

1964年生まれ。東京都立大学人文学部社会学科社会人類学専攻卒。タウン情報誌編集部を経てフリーライター。 3年前義母をなくし、お墓がない現実に直面。購入まで苦労したことがきっかけとなり、意外と知らなかったお墓について調べ、著書『間違いだらけのお墓選び』をまとめる。
現在、「明るくわかりやすくお墓を語る」をモットーに、消費者の立場から見た“お墓”についての講演や関連記事の執筆などで活動中。

【 著書 】

『間違いだらけのお墓選び-買ってわかったお墓事情あれこれ』
2005.11刊/情報センター出版局(1400円+税)

〔第1部:お墓購入ドタバタ体験記〕

年齢も趣味も違う家族が一つのものを買うのは大変なこと。
ましてやそれが“お墓”であればモメるのは当然?!著者と家族の笑える(?)お墓探しの日々を綴る。

〔第2部:お墓に関する49の基礎知識〕

誰もがいつかはお世話なるものなのに、よくわからないもの、それがお墓。その購入の実体験をもとに「これだけは知っておきたい」という知識をまとめた。イラストやフローチャート入りで“初心者”にも楽しくわかりやすく、お墓選びのツボを伝える。