あなたの街の火葬場は築何年?

あなたの街の火葬場は築何年?
~多死社会に向けた施設の将来像は描かれているのか~

 

先月のこのコラムでは、火葬場の予約待ち事情についてお伝えしました。
 
私自身「火葬場」に出向いたことはまだ数える程ですが、その中で印象に残っているのは東京都日野市の施設でした。
数年前、市内に住んでいた親戚の火葬に立ち会うため足を運びましたが、場所は一般的な家が密集する、いわば普通の住宅地のなかにありました。
立地も目立たず、建物自体もコンパクト。平屋の施設内は待合室など最低限の造りで、炉は3つだけ。東京の郊外とはいえ人口約18万の市にこの施設だけで間に合うだろうかと疑問を持つぐらいの規模でした。
 
調べてみると、この日野市営の火葬場は1964年に建てられたもの。
もう1か所、日野市が周辺の4市(八王子市、町田市、多摩市、稲城市)と管理・運営する「南多摩斎場」(公共火葬場)があり、市民はそちらでも火葬が出来るものの、こちらも混雑する時期には予約待ちとなりがちな施設です。
 
日野市営火葬場は現在まで50年以上、改修をしながらの運営を続けていますが、法律の壁があり、建て替えや増築が不可能だといいます。
その利用件数は年々増加。早急な対応を迫られながら、市が具体的な計画に入ったというわけではないようです。
 
先月10日、厚生労働省の国立社会保障・人口問題研究所が2065年までの将来推計人口を公表しました。65歳以上の高齢者人口は2015年の3387万人から2042年にピークを迎え、3935万人になると予想されています。また高齢者人口の増大により、その後の死亡率の上昇が見込まれています。(「平成28年版高齢社会白書」)
各自治体はそんな先行きを見据えた火葬場の整備を進めているでしょうか。
 
千葉県木更津市は昨年12月、近隣他市の火葬場を使用した市民に助成金を交付する制度を始めました。
 
現在、木更津市の火葬場はあるものの、予約が一杯で他市の施設を使わざるを得ない市民が増える傾向にあるといいます。
住民ではない自治体での火葬料は、ぐんとお高くなります。そこで他市の火葬場を利用した場合の差額分を、市が負担するシステムを取り入れたのです。
 
木更津市の火葬場は1967年の供用開始。その後、2基の火葬炉を3基に増やしたり建物内を改築したりしていますが、約半世紀に渡る使用により施設が老朽化しているといいます。
また火葬件数は最近の10年間で約30%の増加。2014年度の稼働率は約76%、1日当たりの平均火葬件数は4.5人(フル稼働で6体)。利用が増える冬場においては稼働率98.6%(2015年2月)と高くなっています。
 
ただ木更津市の場合、現在の敷地に新しい火葬場建設の計画があり2021年度の開設を目指しています。厳しい状況も何年か後には改善される見通しが立っているようです。
 
施設や火葬炉の老朽化や利用の増加に伴い、火葬場の改築・新築を迫られている自治体は少なくありませんが、その計画が順調に進行しているところばかりとは限らないようです。
 
日野市の場合、都市計画法や建築基準法などの壁があり、現在の場所ではその規模を拡大することができません。
こうした関係法令の問題以外にも、開設計画がスムーズに運ばない要因があります。その一つが、火葬場建設の費用については基本的に国からの補助金が受けられないということです。
 
どの自治体も今後の人口減少を見込み財政の縮小が課題となっていますが、火葬場については原則、各自治体の財政負担が求められます。また建設後はその維持、管理費用もかかってきます。
利用の少ない施設であれば廃止や整理も考えられますが、99.9%という高い火葬率の日本では、火葬場はいわば「省けない」施設です。
 
実は、木更津市が予定している新たな火葬場は市単独のものではなく、近隣3市との共同建設を予定しています。
隣接する袖ヶ浦市とは当初から、また君津市、富津市はそれぞれ管理運営する火葬場が建設から20年以上経過しているため、2015年にこの計画加わりました。
木更津市は4市の共同計画について「広域行政の推進は行政の効率化の観点から有効な手段」としています。(同市HPより)
 
行政には今後を見越した適確な火葬場整備への取り組みが求められています。
一方、そこを利用する立場の私たちは、すべてを自治体に任せているだけでいいでしょうか。
 
たとえば自宅のそばに施設の計画が持ち上がった時に敏感に反応することはあっても、普段、火葬場とはどんな場所なのか、あるいはどんな場所であって欲しいのかなどと思いを巡らせる機会は案外少ないのではないでしょうか。
超高齢社会がますます加速し、今までにない変化を迎えようとしている時期に、最期は誰もがお世話になる施設について根本的な観点から再考してみる―。
何かそんなことがスタートとして相応しいようにも思うのです。

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柿ノ木坂ケイ プロフィール

プロフィール

1964年生まれ。東京都立大学人文学部社会学科社会人類学専攻卒。タウン情報誌編集部を経てフリーライター。 3年前義母をなくし、お墓がない現実に直面。購入まで苦労したことがきっかけとなり、意外と知らなかったお墓について調べ、著書『間違いだらけのお墓選び』をまとめる。
現在、「明るくわかりやすくお墓を語る」をモットーに、消費者の立場から見た“お墓”についての講演や関連記事の執筆などで活動中。

【 著書 】

『間違いだらけのお墓選び-買ってわかったお墓事情あれこれ』
2005.11刊/情報センター出版局(1400円+税)

〔第1部:お墓購入ドタバタ体験記〕

年齢も趣味も違う家族が一つのものを買うのは大変なこと。
ましてやそれが“お墓”であればモメるのは当然?!著者と家族の笑える(?)お墓探しの日々を綴る。

〔第2部:お墓に関する49の基礎知識〕

誰もがいつかはお世話なるものなのに、よくわからないもの、それがお墓。その購入の実体験をもとに「これだけは知っておきたい」という知識をまとめた。イラストやフローチャート入りで“初心者”にも楽しくわかりやすく、お墓選びのツボを伝える。