お墓の相続(承継・継承)

お墓の相続といっても、具体的なイメージをしにくいかもしれません。しかし近年では、少子高齢化などにより、お墓の承継やお墓の管理の問題が社会問題となっています。

ここでは、お墓の相続とは何かや承継者の決め方、手続きの方法について解説します。お墓の承継が難しい方には、どのような方法があるかも紹介していますので、お墓の相続でお困りの方は参考にしてみてください。

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お墓の選び方やチェックポイントがわかる

お墓の承継/祭祀財産とは?

お墓の使用権取得者(名義人)が亡くなった際、お墓を継ぐ必要があります。これを「承継」と呼びます。

死亡した人の権利や義務を継ぐことを相続といい、相続によって継がれる財産を相続財産といいます。相続財産には、不動産や預貯金、借金などが含まれます。しかし、神仏や先祖を祀る役割を担うお墓や仏壇などは、相続財産とは区別され、祭祀財産という範疇に入ります。

祭祀財産に相続税は掛かりませんが、承継する義務とそれに際する経済的な負担を担うことになります。墓地の年間管理料や維持費、寺院墓地の場合はお布施や寺院の行事への参加などが、その一例として考えられます。また、お墓は誰かに譲ったりすることはできません。墓所の永代使用料とは、墓所の所有権ではなく使用権になるからです。

お墓の承継は、家を継ぐ長男が承継することが半ば慣習化していました。しかし、一人娘が他家に嫁いでしまったケースや、子供のいない場合など、核家族化の進む現代の社会背景とともに、親族間で承継することが困難な事例が増えてきています。しかし、親族に「承継者がいない」ということで、お墓がなくなってしまうということではありません

民法では、以下の規定があり、被相続人の指定があれば友人であってもお墓を承継することができます。但し、その場合は家族の同意書が必要となります。

民法(897条)

「系譜、祭具及び墳墓の所有権は、相続分の規定によらず、慣習に従って祖先の祭祀を主催すべき者がこれを承継する。但し、被相続人の指定に従って祭祀を主催するべき人があるときは、その者が承継する」

注意点
  • 公営の霊園では承継者は親族と決められていることがほとんどです。
  • 被相続人の指定については遺言、または生前の指定でも構いません。
  • 最終的に承継者が決まらない際は、家庭裁判所が承継者を指定することになります。
  • 長期間にわたって管理料の滞納が続いたときには、一定期間あらかじめ告知した上でお墓の永代使用権が抹消されることになります。

承継者の決め方/優先順位

祭祀承継者は遺産の相続人のように順位が決められているわけではありません。「お墓は子どもが継ぐもの」という考えが浸透していますが、必ずしも子どもが継がなければいけないわけではないのです。もっといえば、血縁関係のない人間がお墓を承継したとしても問題はありません。

しかし、厳密に定められていないからこそ困ってしまうということもあると思います。承継者の決め方としては、次の3つの方法が考えられます。

遺言書に従う

お墓の旧名義人の遺言書にお墓の承継について明記されている場合は、これがもっとも優先されます。なお、必ずしも遺言書のような正式な文書として残っている必要はありません。

生前に口頭で指名された場合も、指名された人がお墓の承継者となります。

話し合いをする

旧名義人からの指定がない場合は、家族で話し合いをする必要があります。一般的には旧名義人の長男あるいは配偶者がお墓を継ぎますが、前述した通り必ずしもそうである必要はありません。

家族間で合意が得られるのであれば、ほかの人がお墓を承継することも可能です。

家庭裁判所に調停を申し立てる

どうしても話し合いで決着がつかずに大きな揉め事に発展してしまうこともあるかもしれません。その場合は、家庭裁判所に調停を申し立ててお墓の承継者を決めましょう。

ちなみに、民法では祭祀承継者についての規定はないものの、墓地によってはお墓の承継者に条件が設けられている場合があります。例えば、「三親等以内の者がお墓を承継しなければいけない」などです。このような規定がある場合には、これに従って承継者を決めましょう。

話し合いで決めた承継者が、お寺または霊園が定める規定から外れてしまっている場合は、もう一度話し合いをしなければいけなくなります。このような二度手間を避けるためにも、承継者に関する規定はしっかりと確認しておくようにしてください。

お墓の管理者を変えるのはいつ?

お墓の引き継ぎは、名義人が亡くなったときに行われるのが一般的なようです。しかし、亡くなるまで名義人の変更ができないわけではありません。名義人が高齢になったなどの理由で、生前に名義変更を行う場合もあります。

親族が亡くなったときには、遺族は悲しみの中で様々な手続きや作業に追われることになります。そのことを考えると、生前にお墓を承継しておくのは賢明だといえるかもしれません。

お墓を承継する手順

お墓の承継をするときは、次の手順で行います。

  1. お墓の承継者が墓地の管理者に「墓地使用者の名義変更届」を提出
  2. 名義変更手数料の支払い(寺院墓地では「寄付金」として扱う場合もあります)

お墓を承継する際にはさまざまな書類が必要となります。

名義変更に必要な書類

墓地使用許可証

墓地使用許可証とは、お墓を代々使用するための許可証のことです。墓地使用許可証があれば、名義人を変更してもそのままお墓を続けていくことができます。もし故人が所有していた墓地使用許可証が見つからない場合は、墓地の管理事務所に相談してみてください。

名義変更届(承継使用申請書等)

お墓の名義変更に関する概要を、名義変更届に記載します。ほとんどの墓地では名義変更届の書式を指定しているので、墓地の管理事務所にて所定の用紙を受け取りましょう。また、墓地によっては公式サイトから用紙をダウンロードすることができます。墓地まで足を運べない場合には、ダウンロードしたものを印刷して必要事項を記入しましょう。

なお、この届け出の名称は墓地によって異なります。「名義変更届」という名称を使っているところもありますが、「変更届出書」「墓所承継使用申請書」などの名称が用いられていることもあります。

戸籍謄本

戸籍謄本は、旧名義人と申請者の続柄を証明するために必要となります。また旧名義人の死亡を確認するという目的もあるので、必ず旧名義人の死亡が記載されていることを確認しましょう。

なお、戸籍謄本は発行日が古いと受け付けてもらえません。発行後3ヵ月以内のものを用意するようにしましょう。

申請者の実印・印鑑登録証明書

印鑑登録証明書も戸籍謄本と同様で、日付が古いと受け付けてもらえません。発行後3ヵ月以内のものを用意するようにしてください。

遺言書

故人が残した遺言書にお墓の承継者について明示されている場合は、遺言書も提出する必要があります。

墓地によっては、遺言書は原本でなければいけないとしていますが、遺言書がほかの手続きに必要になる場合もあると思います。遺言書のコピーでも問題ないか、墓地の管理事務所にあらかじめ問い合わせておくといいでしょう。

なお、遺言書が必要となるのはお墓の承継者を指定している場合のみです。遺言書が残されていない場合やお墓の承継者について言及されていない場合は、遺言書を提出する必要はありません。

お墓を誰に承継するかに関しては、正式な遺言書である必要はなく、口頭や簡単な手紙でも構いません。しかし、後顧の憂いを残さないためにも正式な遺言書を作成しておくことをお勧めします。
※正式な遺言書作成は、弁護士や公証人役場にお問い合わせください。
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承継した後に必要な費用は?

既存のお墓を引き継ぐだけであればそれほど莫大な費用はかかりません。

しかし、お墓を承継すると管理料の支払い義務が発生します。これらの費用について詳しく見ていきましょう。

管理料

管理料とは、墓地内の施設を維持管理するために支払う費用のことです。施設の水道代や電気代も、管理料から支払われています。数千円~数万円が相場となっています。

お布施・寄付

寺院墓地の場合、檀家としてのお付き合いが始まりお布施や寄付といった費用が発生します。金額はそれぞれの寺院によっても大きく異なります。詳しくは墓地を管理・運営する寺院に確認しましょう。

お墓のある土地が私有地の場合

稀ではありますがお墓を立てている土地が個人の私有地である場合があります。この場合、その土地は相続財産に含まれますが、墓所・祭具は相続税法により非課税とされています。また、地方税法により不動産所得税や固定資産税、都市計画税もかかりません。

税金はかかるの?

なお税金についてですが、永代使用権やお墓・仏具などは「祭祀財産」と呼ばれ、相続財産には含まれないとされています。そのため、お墓を承継したことによって相続税や贈与税などの支払い義務が生じることはありません。

相続放棄をした場合、承継できるの?

永代使用権やお墓、仏具など相続財産には含まれません。相続人が相続するというものではないため、仮に旧名義人に負債があって財産放棄をした場合でもお墓はそのまま承継することができます。

以上のことから、お墓がある土地が私有地かどうかにかかわらず、お墓の承継には税金はかからないといえます。

ただし、お墓を承継した後に承継者が他宗派に改宗したり、お墓は承継するが寺院の檀家としての役割を拒否した場合、寺院によってはお墓の使用を拒まれることもあります。その場合には新たにお墓を求め、改葬せざるを得なくなるでしょう。

また、管理料が一定期間支払われないと、永代使用権が取り消されることになります。(都営霊園は5年)

わからないときは誰に聞けばいいの?

ほとんどの人にとって、お墓を承継するのは一生に一度のことです。そのため、引き継ぎについて分からないことがあるのは当然のことだと思います。

どうすればいいか分からないときには、まずはお墓がある墓地の管理事務所に問い合わせてみるといいでしょう。特に手続きについての質問であれば、しっかりとした回答を得られるはずです。

墓地によっては、旧名義人が亡くなったときには何日以内に名義変更を行わなければいけないという期限を設けています。手続きの方法が分からないからといって放置していると、いつの間にかこの期限が過ぎてしまうかもしれません。分からない点がある場合には、まずは気軽に相談してみてください。

お墓を承継できな場合/墓じまいという選択肢

ここまで、お墓の承継者の選び方およびお墓を継ぐときの手続きの方法について解説しました。

しかし、実際にはお墓を続けていくのが難しいという場合もあると思います。その場合は、墓じまいを行いましょう。

最近では、誰も管理を行っていない「無縁墓」が増えてきました。その数は全体の40%に上るともいわれています。お墓の管理をするのが難しい人が無理にお墓を継ぐと、せっかく代々続けてきたお墓もいつしか無縁墓となってしまうかもしれません。お寺や霊園も、無縁墓をいつまでもそのままにしておくことはできません。そのため、長い間誰も訪れないお墓は撤去されてしまいます。

無縁墓になってしまうよりは、故人のためにも墓じまいをするべきでしょう。

承継者がいなくても入れるお墓もある!

承継者の有無に関わらず、霊園・寺院が永年にわたって管理・供養してくれるお墓のことを「永代供養墓」と呼びます。お墓の承継について悩まれている方の新しい選択肢として近年注目されてきています。

お墓の承継でお困りでしたら、検討してみてはいかがでしょうか?

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おわりに

核家族化や少子化、そしてライフスタイルの変化などの影響から、近年ではお墓事情が大幅に変わってきています。そして、それと同時に新しいお墓のスタイルも目立つようになってきました。

例えば、お墓を継ぐ人がいなくなってもお寺が供養を続けてくれる「永代供養墓」などです。承継者がいないという理由で墓じまいをする場合は、永代供養墓に改葬する人が多いようです。

もちろん、先祖代々受け継いできたお墓を続けていけるのであればそれが一番です。しかし、それが難しいのであれば墓じまいという選択肢を考えてみてもいいのかもしれません。

お墓の在り方について、どれが正しいというものは存在しません。家族にとって一番だと思うお墓の在り方を、家族みんなで話し合ってみてはいかがでしょうか。