塔婆の材料は、どこから? ―国産杉の塔婆づくりレポート―

2018年7月17日

墓石の後に立てられる板状の〈塔婆=とうば〉。頭部には、何やら刻みが入っていますが、あれは五輪塔の形です。
塔婆は、仏教において死者を供養するためのアイテムとして使われます。梵字・経文・戒名などが墨で書かれている塔婆を、皆さんもどこかで目にしているかと思います。

その塔婆の原料となる木材は、現在8割以上が外国産といわれています。そんな中で、国産杉の塔婆づくりに力を入れている方がいると聞いて訪ねてみました。

明治時代頃から続く下野材木店は、卒塔婆の他、護摩札、絵馬などもつくっているそうです。住所は東京都西多摩郡。東京都といっても、奥多摩の山々に囲まれた自然豊かな地域です。

その5代目下野博栄さんが、この多摩地区で生育した杉で塔婆づくりを始めたのは、2002年のことでした。
地元の人に誘われ、林業の研究会に入って山の現状を知り、卒塔婆材の多くが外国産であることに疑問を感じたことがきっかけだったといいます。

日本では、第二次世界大戦が終わった後、復興のため植林は国の推進事業でした。高度成長期に入り、木材の需要は高まりますが、1964年木材輸入の全面自由化以降、外国材の供給量が増加します。
その後のオイルショックによる景気後退。国内の人件費アップ。いくつもの要因が重なり、戦後に植林された多くの木が伐採されることなく、放置された状態になりました。いわば、せっかく成長した日本中の木が切られることなく残ってしまったわけです。

「日本に木があるのに使わず、外国材を買うこと矛盾を感じました。どこが違うかというと、杉の場合、赤い色目が入ることがあります。塔婆の場合は、真っ白ではないことで等級が下がってしまう。それでも国内の木を使った塔婆をつくりたいと考えました」

塔婆は、長さや幅が同じ規格であれば、「節があるかどうか」「全体が白いかどうか」で等級が決まるといいます。その等級は価格にも反映されてきます。

利益の面からも、決して有利とは言えない国産杉の塔婆にこだわるのはなぜなのでしょう。
「杉塔婆の需要が増えていけば、丸太の原価が上がってその分が山の手入れの費用になります。塔婆の利益が少なくても、林業にはプラスになるんです」

その他、国産材の需要が高まるメリットとして、下野さんは「林業に使われている税金分が他の分野にまわる」「雇用が生まれ、地元が活性化する」ことなどを熱く語ります。

塔婆を購入するのは、主に墓地を持つお寺です。
下野さんの広い視野、社会全体を考えた事業に賛同してくれたお坊さんが、塔婆を購入してくれたり、他のお寺に紹介してくれたりして、現在、徐々に販路を拡げているといいます。

塔婆の材料となる木の産地を気にかける人は、少ないかもしれません。
私もこれまではそんな一人でしたが、国産材を使った塔婆づくりで、森林保全やコミュニティの活性化を目指す取り組みがあることを知り、少し意識が変わりそうです。

もし、年忌供養などで塔婆をお願いすることがあれば、色や香りを確認してみて下さい。
全体が真っ白ではなく、赤い木目が入っている。そして木のいい香りがすれば、それは日本の杉でつくられた塔婆かもしれません。