背中で伝えるお墓参り

2018年7月17日

代々のお墓は、親から子へ引き継ぐもの。
これからもそれが、人々の意識の中で「当たり前」のこととして残っていくでしょうか。

昨年、ニッポン放送(AMラジオ)の「テレホン人生相談」を聞いていると、お墓についての話が出てきました。

その日の相談者は60代の男性でした。
「30代の一人息子とその嫁が冷たい」と切り出した男性の悩みは次のようなことでした。

「息子夫妻とは別に住んでいる。息子の嫁が、病気になった自分の妻の看病に来ても、食事を作るとすぐに帰ってしまう。そんな不満もあって、ある日、嫁に我が家のしきたりについて言って聞かせた。お墓参りについても『年二回、お彼岸の中日には全員が揃って行くのが望ましい』などと話したら、後日、息子から『嫁がノイローゼ気味になった』と文句を言ってきた。それ以来2人は家に寄りつかなくなった。
一人息子なので、しっかり跡取りとしての責任を持ってもらいたいのだが―」

嫁に意見し、加えてお墓参りについても注文をつけたところ、息子夫婦からひんしゅくを買ってしまったようです。
ただ、どうやらこのモヤモヤの根底には、お墓参りをきちんとしないという理由から、男性の目には跡取りとして物足りなく映る息子への強い不満があるようでした。

回答者は、占星術家で執筆家の男性、マドモアゼル・愛氏でした。
相談者の話を聞いたマドモアゼル・愛氏はまず自分のことを話し始めました。

「ボクも一人息子という立場です。
小さい頃は親に連れられてお墓参りをしていましたが、大学に通う頃になって行かなくなりました。だけど30歳の時に父親に声をかけて、久しぶりに2人で連れ立ってお墓に足を運びました。
その時、父親は何も言わず、昔のように黙々と墓を掃除していました。その背中をみて、父親の気持ちを自然と受け継いだ気がします」

そして相談者にこうアドバイスを送りました。
「一人息子に墓を継いで欲しい気持ちはよくわかりますけど、それを言葉にしたり、強要したとき、その願いは叶いませんよ。ボクも息子には『お墓を継げ』とは言わないつもりです。あくまで行動で示して、それで通じなければそれまでのことと考えています」

〝男は背中で語る〟などといいますが、マドモアゼル・愛氏は、自分が受けた父親の意思を同じ方法で息子にも伝えようとしているようです。

思っていることを言葉にするのは、ある意味簡単です。
でも時に、言葉ではなく、その人自身の振る舞いが相手の心に訴える力を持ちます。

「お墓参り」そして、お墓を引き継いでいくこと。
慣習とか風習というものは〝カタチ〟ではありますが、そこに〝心〟がないと本当の意味の伝承にはならないように思います。
結局それを伝えていくのは人から人へなのだから-。

ついでに口を挟ませていただけるなら、もう一つ。
お舅さんからその家のしきたりを直接言い聞かされるというのは、嫁の立場からするとかなりのプレッシャーです。このお嫁さんがノイローゼになったのはよくわかります。

その意味からも、同じような悩みを持つ方がいればぜひ、お墓参りについて言葉で強いるのではなく、次の代をその場に誘い出すことから始めていただければ、などと思います。