〝夫婦別墓〟となる前に

2018年7月17日

死んでしまえば、ものを想うことも感じることも出来なくなるとはわかっていても、ヒトは、「あの世であの人と同じ空間にいるのはご免だわ」などと考えてしまうものなのです。

年末に大掃除をしながらラジオに耳を傾けていると、ある番組の人生相談が流れてきました。
リスナーからの電話に、法律家や心理学者などの専門家が答えるというコーナーです。

その日の相談は70代の女性からでした。
女性の夫は退職してからというもの、度々自宅でお酒を痛飲するようになり、その時には決まって大声を出したり女性を罵ったりするのだとか。
相談者によれば、夫は「外ではいい顔をするくせに、気が小さいのでウチでしか文句が言えない人なんです」とのこと。

そんなご主人の行動を止めさせたいという相談ではありません。
夫と別れるつもりはないけれど、死んだら旧姓に戻したい。お墓も一緒には入りたくないと言うのです。

矛盾しているようでもその気持ちは何となくわかります。
「離婚」にはエネルギーも必要です。高齢になってその関係を変える元気はないけれど、「せめて死んだ後は」ということのようです。

相談するその声は終始冷めきっていて、あきらめの境地にいることが察せられました。
女性はこれから自分のためのお墓を別に買い求めて、埋蔵などを息子さんに託したいという希望があるようです。

弁護士の回答は次のようでした。

  1.     遺言書に自分の希望を残し、それを実行する人=「遺言執行者」に息子さんを指定する
  2.     死んだ後の名前については、法律では何も触れていない。お墓に旧姓を刻むことも可能。

その後、年配の男性弁護士は、法律的な見地からとは別にこう言い加えました。
「男はね、仕事を取られちゃうと荒れるの。特に会社一筋たっだような人は辞めると何も残らないのね。他の退職者も郊外に住んでいて集まる場所はないし、奥さんに当たるしかなくなっちゃうの」

同じ男性としての目線に加え、多くの人と接触する仕事上の経験から出てきた言葉だったのでしょうか。その助言は、「酒を飲んでは暴言を吐くひどい夫」という視点を少し変える力があったようです。
「まあ、そうなんですか。…わかりました」
アドバイスを受けて応える女性の声が、心なしか明るく聞こえました。

ひとごとながら、残りの人生を一緒に過ごすご夫婦がうまくいくことを願いました。〝あの世〟に思いを持ち越すことなく、〝この世〟で幸せな時間を過ごすのがいいに決まっています。

ところでこの女性に限らず、婚姻関係にありながら「夫と同じお墓はイヤ」という声は少なからず耳にします。
その場合、やはり相手への気持ちが冷めたことが考えられますが、原因はこのケースのようにコミュニケーションのつまずきなのでしょうか。

その関係に甘んじることなく、伴侶の気持ちを確かめたい時には、「自分と一緒のお墓に入ってくれるか否か」を尋ねてみるといいのかもしれません。