男の美学?「献体」増加のなぜ?

2018年7月17日

今、献体を希望する人が増えている。全国の登録者数は1970年代半ばまで1万人台にすぎなかったが、その後増加を続け2007年には21万人を突破している。

解剖に必要な数を超えても保管には限度があるため、現在は希望者に面接を行ったり、抽選で決めたりと登録を制限する大学も多い。

「献体の登録がしたい」。葬儀に関する相談を受けるサポートセンターでは、主にシニア世代の男性からそのような問い合わせが入るそうだ。
生前に自分の死後のことを決めておき、家族には迷惑をかけたくないと考える人が多数だという。
理由を尋ねると、「献体をすると、火葬してもらえてお骨になって戻ってくるから、お金がかからないでしょ?」という声が返ってくるのだとか。

献体とは、医学・私学の大学における解剖学の教育・研究に役立たせるため、自分の遺体を無条件・無報酬で提供すること。
いわば「医者の卵たちのために、自の体を教材として提供したい」という善意の意志に支えられているはずだけれど。

献体希望者は献体篤志家団体か、医科大学・歯科大学に申し込む。
解剖実習が終わると火葬され、遺骨が遺族に返される場合と、大学の納骨堂などに合祀される場合がある。
大学側が火葬費を負担することから、「お葬式をしなくていい」と誤解して申し出る人もいる。

確かに火葬はやっていただけても、お別れの儀式は別。
実際は、遺体を大学に運ぶ前にお葬式をすませるケースと、解剖が終わってから改めて(骨そう)というケースがみられる。

ところがこのお葬式に関して、先のサポートセンターには「どちらにしていいかわからない」という家族からの困惑の声が寄せられるとか。

遺骨となって返還されるまでの日数がはっきりしないことは、その一因と思われる。
提供された遺体は、防腐処理などの準備期間に数ヶ月を要する。その後実習まで保管されるものの、カリキュラムによっては解剖が翌年、翌々年になることもあり、家族の元に帰されるまで1~2年、場合によっては3年かかることもある。

かつ、大学では死後48時間以内の受け渡しを希望するので、その時間内にお葬式をするのか、何年後かにお骨になって戻ってくるその時を待つのか、迷うというのだ。

ほとんどの登録先では、申し込みに家族の同意の必要性を強調してるものの、その後のお葬式については本人からの説明がなかったことも考えられる。
「費用の負担をかけたくない」と選択したことが、かえって戸惑いを与えてしまうことがないよう、家族間での充分な話し合いが必要のようだ。

ところで年間約40体を解剖するという群馬大学医学部では、そのうち約25%の遺骨は引き取り手が訪れず、大学所有の納骨堂に入るという。

(読売新聞 2010.08.01)

お墓の心配をかけたくないという本人の配慮なのか。
それとも、「家族に迷惑をかけたくない」という言葉は、実は、迷惑などかけられない家族関係を示しているのか。
献体希望者増加の背景がちょっと気になる。