土をかけるか、かけないか。それが問題?

2018年7月17日

人前で喋ることが下手で苦手。それなのに、時々「お墓について話してみませんか?」という依頼を引き受けてしまっている自分が怖い。今年もそんな機会に恵まれた(?)ある消費者向けのセミナーで、こんな質問が出た。
「遺骨を庭に埋めていいのか。撒くのはどうか」。

まず、「庭に遺骨を埋める」ことは現在では難しい。都道府県知事から墓地として許可を受けた区域以外に焼骨を埋めることは、法律で禁じられているから。
畑や山などに建てられたお墓は今でも見かけるけれど、例外の地域を除き、個人や村落などで所有する墓地の新設は認められていない。

また以前このコーナーで、公園に勝手にお墓を建ててしまった中国での事件を紹介したが、日本であってももちろんこれは違法行為になる。その公園が法律上「墓地」と認定されない限り。

次に「庭に遺骨を撒く」方。
1948年に制定された、「墓地、埋葬等に関する法律」(通称『墓埋法』)は土に埋めることを前提とし、撒くことを想定していない。つまり、今のところ散骨は法律のしばりを受けないことになる。
また散骨について、以前、法務省が「節度を持って行う」という条件付きながら問題ないとコメントを発表している。

では、「自宅の庭で」はどうなのか。このことに関して、国はこれまでその善し悪しを判定していない。ただ、自治体が規制する条例を定めていることもあり、住んでいる場所によっては庭での散骨が違法となることも考えられる。
昨年、埼玉県秩父市では「何人も墓地以外の場所で焼骨を散布してはならない」という条例を定めた。問い合わせたところ、私有地であっても散骨は禁止とのことだった。

そんなことをお話したところ、さらにこんな質問が。
「ところで、〈埋める〉と〈撒く〉の違いはなんでしょう?」
「土をかけるか、かけないかです」と手短に答えたところ、合点がいかないような顔をされてしまった。

例えば、北海道長沼町で散骨樹木葬地(墓地としての許可を受けていない)計画の話が持ち上がり、住民が反対したため、町が国に対し、ここでの葬り方について問い合わせたことがある。その際、厚生労働省は、「穴を掘って遺骨を撒き、その上に樹木を植えたり、土や落ち葉をかけたりするのは、墓埋法の『焼骨の埋蔵』に当たる」と答えている。

この見解が意味するのは、遺骨に土をかけること=〈埋める〉=法律上のお墓として扱われ、規制対象となるということだ。一方、〈撒く〉=散骨は土をかけないこと。この国では法律上「お墓」か「お墓じゃない」かは、土をかけるかかけないか、そんな微妙な差で決まるのだ。
・・・なんだか多少ややこしいことになっているけど、あの時の補足としての話。

なお『墓埋法』で、〈お墓〉はこう定義されている。
「墳墓とは、死体を埋葬し、又は焼骨を埋蔵した施設をいう」(第二条4)。
法律だからとわかっていても、「味気ない」感は否めない。

セミナー後のアンケートの、「あなたにとってのお墓は?」という問いに対し、「故人に想いをはせ、手を合わせるところ」という回答があった。
短いけれど、しっくりきた言葉だった。

参考資料:『お墓の法律Q&A』(有斐閣選書)