TVドラマ『やすらぎの郷』とお墓の話

2018年7月17日

TVドラマ『やすらぎの郷』とお墓の話
~「今の墓地では土に還れない」は本当?~

『北の国から』などで知られる脚本家倉本聰氏の久しぶりの連続ドラマ作品『やすらぎの郷』が、今年4月からTV朝日系列で放送されています。
石坂浩二、浅丘ルリ子、加賀まりこ、八千草薫、藤竜也、6月に亡くなった野際陽子さんなど豪華な俳優陣も目を引きます。

舞台は、黄金期の映画やテレビを支えた往年の俳優や脚本家などを無償で受け入れるという、架空の老人ホーム「やすらぎの郷」。ここで起こるさまざまな出来事が描かれています。

これまで放送されたなかでの事件といえば、たとえば大物時代劇俳優の入居していた部屋の天井裏から、遺言書と形見の名刀が出てくる。遺言書には婚外子の存在が明かされていたため、遺産相続のやり直しを行うことに。主人公のシナリオライター菊村栄(石坂浩二)はこの顛末を見聞きするなか、遺産相続の難しさや、自分の死後のことを考え始める―という展開でした。

ところで、思わず笑ってしまう場面がありながら、シリアスなテーマが取り上げられることもあるドラマのなかで緩衝材の役割を果たしているのが、主人公菊村と2人の入居者、真野六郎(ミッキー・カーチス)と岩倉正臣(山本圭)のシーンです。3人は海辺で釣りをしながら、とりとめのない会話を繰り広げます。

〝遺産相続〟がテーマとなった週では、3人の以下のような会話が交わされていました。

「人間って死んだらどうなると思う?」
「土に還るんでしょ?」
「今は土に還れないよ。昔は墓の下が土だったけど、コンクリートなんかで固めてるもん。よっぽどのことがない限り土に還れないよ」

ドラマの登場人物が話す「昔と違って、お墓の下はコンクリートだから遺骨は土に還らない」。
あなたもそう思いますか?

遺体を土中に埋めた土葬主流の時代を経て、火葬率がほぼ100%近くとなった現代では、墓地のつくり自体も大きく変わってしまったのでしょうか。

これまで、東京近郊で新たに造られる霊園のいくつかを見る機会がありました。そして、確かに墓石の下、納骨室の底にコンクリートは敷かれていました。
―ただし、その一部分は土のまま。この残されたこの部分が、まさに「遺骨を土に還す」ためのスペースなのです。

たとえば二十五回忌、三十三回忌など節目の供養の時、あるいは納骨室の骨壺が一杯になったときには、遺骨をこの土の部分に空けます。年月を経て、骨は土の一部へと変化していきます。

東京以外ではどうでしょう。
東北地方では納骨の際、骨壺から焼骨を出して、そのまま納骨室に入れます。こうしたやり方をとる地域では、墓の下は一面が土となっています。

またお墓建立に携わる関西の石材店さんに聞くと、「お墓の下に土の部分を残すのは常識。仏さんの『息抜きの穴』と呼ばれていて、区画面積によって30~50cm角のスペースを取る。皆さんの『遺骨を土に還す』という意識は非常に高い」というお話でした。

もちろんあらゆる場所の墓地を調べたわけではありませんので、一部「墓の下が一面コンクリートのお墓」もあるのかもしれませんが、「土に還す」ためのつくりは案外守られているのです。

一方、ドラマの登場人物の台詞は、霊園や墓地を造る工事過程をつぶさに眼にする機会は少ないであろう一般の方の見方を表しているのではないかとも思います。

お墓の新しいスタイル「散骨」や「樹木葬」を選択する理由の一つとして、「死んだら自然に戻りたい」「土に還りたい」の声を聞きます。
実際は一般的な霊園・墓地でもそれができる環境がありながら、そちらの方がよりダイレクトに「自然に還る」という実感が得やすい。
あるいは、きちんと区画整理され、歩きやすく快適な環境が用意されている今どきの霊園では「土に還る」というイメージを描きにくいということなのかもしれません。

ちなみに個別の家のお墓だけではなく、納骨堂や永代供養墓でも、いずれ遺骨を土に還すための場所が用意されていることがほとんどです。
どのようなスタイルであっても「自分たちのお墓では、遺骨は将来どうなるのか」が気になる場合は、ぜひ管理事務所やお寺に尋ねてみてください。

柿ノ木坂ケイ