〝紫の貴公子〟プリンスの「お墓」

2018年7月17日

の貴公子〟プリンスの「お墓」

12月にフランスで行われたフィギュアスケートの「グランプリファイナル2016」で、日本が誇る羽生結弦選手が見事4連覇を達成しました。
今シーズンから取り入れた新しいショートプログラムでは、紫を基調とした衣装で、髪も少し悪っぽく―。
これまでにない羽生選手のイメージで、その演技の幅を広げたように感じました。
曲は『Let’s Go Crazy』。作曲はプリンスです。

この曲がリリースされた1984年頃、プリンスとは同じ年齢のマイケルジャクソンもヒット曲を連発していました。
日本ではややマイケルの方がメジャーでしたが、若かりし頃の私はアブノーマルな雰囲気のプリンスに夢中。アルバムを聴くことはもちろん、連日、来日コンサートに足を運ぶほどでした。

本名プリンス・ロジャー・ネルソン。これまでに39枚のアルバムを発表し、アカデミー賞を7度受賞しているアーティスト。ギター、ドラムス、ピアノ、ベースなどの楽器の演奏をこなし、作曲作詞はもちろん曲のアレンジも一人で手掛けてしまうスペシャリストで、ヒット曲は数知れず―。

そのプリンスが亡くなったというネットニュースを見たとき、にわかには信じられませんでした。享年57歳。早すぎる死でした。
葬儀は亡くなった2016年4月21日の2日後に執り行われ、その後、遺体は火葬されたことが報じられました。

火葬後の遺骨はどうなったのか―。その行き先は一般的なお墓ではありませんでした。

それはコンパクトな、遺灰を納めるオブジェのようなもの。
作成したのは、アメリカのフォーエバレンス社。オーダーメイドで、遺灰を納める骨壺を作る会社です。

骨壺といってもいわゆる〝壺〟ではなく、故人の特徴を表すようなさまざまな形状を3Dプリンターで作り出します。
たとえば、音楽が好きだった人にギター型の骨壺、生前に暮らした自宅を模したもの。飼っていた犬を形にした骨壺。

家族や遺された人が、自宅に置いて故人を供養できるような、いわゆる手元供養の一種になります。

プリンスの〝骨壺〟の形は「ペイズリーパーク」が選ばれました。
ペイズリーパークは1985年、米ミネソタ州にプリンス本人が造った施設です。レコーディングスタジオやコンサートホールを備えながら、居住空間も設けられていました。また、葬儀もここで行われています。

骨壺を依頼したのは妹のタイカさんとその息子のプレジデントさん。
「仕事場兼自宅を、エルビス・プレスリーのように記念館にしたい」という2人の希望が最も反映される形として、最終的に選ばれたといいます。

完成した幅約46cm、高さ36cmのミニチュアの内部には、プリンスが愛用していたというピアノなど詳細が再現されました。そして、その遺灰は、実際の建物の中央部にあるシンボルマークの内部に納められました。
※写真※

2016年10月6日、ペイズリーパークは新たに博物館として開館するとともに、この骨壺も公開されています。

プリンスのようなビックネームのお墓参りは多くのファンが望むところですが、室内の納骨堂のようなところではそれが制限されてしまうこともあります。
生まれ変わったペイズリーパークを訪れるファンは、実際に彼が仕事場としていた建物内の見学とともに、この小さなお墓と対面できることとなりました。

ところで、プリンスの死後、彼を追悼する番組がいくつか放送されました。
そこで初めて知ったのは、骨壺でも形作られたシンボルマークのこと。

このマークは、1993年にプリンスがその名前を捨て新たに名乗った〝名前〟。「The Artist Formerly Known As Prince = かつてプリンスと呼ばれたアーティスト」などと呼ばれていました。

この改名はレコード会社との軋轢が発端とも言われていますが、その真意は定かではありません。いずれにせよ、その後10年程、このシンボルマークが彼のアーティストとしての名前でした。

追悼番組で知ったのは、そのマークの形は、男性を現わす♂と女性♀を合わせたものだったこと。
また、プリンスの色といえば思い浮かべる「紫」は、一般的に男性色とされる青と女性色の赤を混ぜ合わせた色だったこと。

日本でも女の子にはピンクや赤、男の子には青系の服を着せたりする傾向があります。
プリンスがこのマークや色を用いたのは「自分は、世間が押し付ける男性や女性の定義には染まらない」という主張だったのでしょうか。

私の場合、プリンスの曲を聴いていたのは主に80年代のこと。社会人になるとともに音楽そのものからやや離れていた時期を迎え、それ以降、彼の言動や活動にはほとんど触れずにきています。
つまり、90年代以降のアルバムがまだ残されているのです。

これから創り出されただろう、新たな曲を聴くことができない事実は変わりませんが、この未知の領域に踏み込める幸せをかみしめたい。
聴くたびにワクワク感があった彼の音楽、そしてその歩みをもう一度たどってみたい―。
そんな風に思います。

柿ノ木坂ケイ

プリンスの〝骨壺〟