―絵本『このあと どうしちゃおう』作者 ヨシタケシンスケさんに聞く―

2018年7月17日

―絵本『このあと どうしちゃおう』作者 ヨシタケシンスケさんに聞く―
〝悲しさ〟だけではない、死へのアプローチへ

墓石にたくさんのなぞなぞが書いてあるもの、大型すべり台型―。お参りが楽しくなりそうなお墓が13種類も描かれた絵本をみつけました。

作者はヨシタケシンスケさん。
イラストレーターとして作品を発表するなか、3年前に絵本『りんごかもしれない』(ブロンズ新社)を出版。今年4月に出した、『このあと どうしちゃおう』(同出版社)が10月末時点で累計18万部というヒットになっている注目の作家さんです。

物語は、亡くなったおじいちゃんの部屋から、孫の男の子が『このあと どうしちゃおう』というタイトルのノートを見つけるところから始まります。
そこには冒頭でご紹介したような、「こんなお墓をつくって欲しい」と題したページもあります。いわば故人が残した、イラスト入りのエンディングノートなのです。

ところで本では、故人が亡くなるまでの経緯については一切触れられません。またお葬式の場面もありません。なぜでしょうか?

作者のヨシタケさんにお話しを伺ってきました。

「はじめは、おじいさんが希望する『こんなお葬式がいい』『こういう風に送り出して欲しい』というページもあったんですが止めました。どうしても死んですぐのセレモニーというと、もの悲しさを引き出してしまうので」

この本は、おじいさんが想像する天国の様子などがユニークに描かれていて読む人をほんわかとさせてくれます。死をテーマにしながら、悲しさとは別の感触があるのです。

「死を扱った映画やドラマもありますが、どうしても喪失感といった感情論に寄ってしまうものが多い。いわゆる『泣いて下さい』というお涙頂戴的なものになりがちなんですが、もう少し多角的に、そして感情だけに頼らずに死というものを語れないだろうかと考えたのです」

ヨシタケさんがそんな絵本をつくろうと考えたのは、両親との死別体験があったからだとか。

「僕は27歳のときに母を、その数年後には父を亡くしています。その経験のなかで、死を目前にすると死の話ができなくなることを実感しました。
その頃、死について面白おかしく冗談半分に話せるきっかけがあれば、あの時の僕は救われただろう、父や母と話したかったことを話せたんじゃないかという後悔があるんです」

当時の自分に、そして自分のような立場の人に向けて、この本を企画したとお話しいただきました。

いずれ迎える終末や死について、家族がお互いの気持ちを確認する―。大切なことだとわかっていても、それが出来ている人は案外少ないのではないでしょうか。
ヨシタケさんが経験されたように、実際に死が迫ったときでは難しく、かといって普段の生活の中で話題にするには、少々ハードルが高い…。

『このあと どうしちゃおう』の読者は、10歳未満の子どもから80歳の高齢者までに及んでいるといいます。
出版社には「テーマが難しく、子どもにはネガティブな話題かなとつい避けてしまいますが、この本を読んだ息子たちが天国について話していました」というお母さんからの感想も寄せられているとのこと。

先入観を持たない子どもたちは、死を特別視することのない絵本のスタンスをすんなりと受け入れているようです。

一方、「難しい」「ネガティブ」と、それを口にすることをためらいがちな大人たち。
この本が表現する、悲嘆や喪失感だけではない死へのアプローチは、そんな固定観念を切り替えてくれる助けともなりそうです。

柿ノ木坂ケイ