遺影と遺骨ペンダント、オリンピック

2018年7月17日

遺影と遺骨ペンダント、オリンピック

男子体操団体の金メダル、男子400mリレーの銀、卓球も水泳も。今年の夏は、日本人選手が活躍したオリンピックで盛り上がりました。

女子ではレスリングの伊調馨選手が、夏季オリンピックの女子個人種目では史上初の4連覇を達成しました。

決戦を制した馨選手は、「最後はお母さんが助けてくれた」とコメント。お姉さんで元選手の千春さんの元に駆け寄ると、2年前に亡くなったお母さんの遺影を受け取り、胸に抱きました。

オリンピックで〝遺影〟と言えば、シドニーオリンピックで金メダルに輝いた井上康生さんを思い出します。

今回は男子柔道の総監督だった井上さんは、2000年の五輪では、100kg級の代表選手として見事勝利。一番金メダルを望んでいた母親の遺影を持って表彰台に立ちたいと考えましたが、関係者からはその持ち込みの許可が出なかったようです。
それでもメダルを掲げられた井上さんが、シャツの下に隠していた遺影を誇らしげに掲げた姿が印象に残っています。

ところでオリンピックと同時期に行われていた今年の高校野球は、例年より多少、陰が薄かったでしょうか。
決勝戦はリオオリンピックの閉会式と同じく8月21日に行われ、栃木県の作新学院が優勝しました。

この試合で作新学院のピッチャー今井達也選手は相手チームに1点を取られるも、9回を完投しました。
点を取られそうなピンチで今井投手は、胸に手を当てていました。
そこには今年4月に亡くなった祖父の遺骨ペンダント(遺骨が少量入る、身に付けられるペンダント)があったからです。

野球好きで経験もあった祖父は、今井選手に技術的なアドバイスもしていたといいます。甲子園に行く約束をしていた今井選手は、祖父の死後、より練習に励んだそうです。そして甲子園という舞台で全5試合中4完投を成し遂げました。

「おじいちゃんが力を貸してくれたような気がします」。試合後、今井投手はそうインタビューに答えていました。
(読売新聞『亡き祖父と約束の力投』2016/08/22)

遺影(写真)と遺骨ペンダントと形としては異なりながら、伊調選手も今井選手も、故人の象徴としてのそれに見守られての戦いでした。

リオデジャネイロオリンピックで獲得した日本のメダル数41個は、過去最多でした。
そのメダリスト達が揃って口にしたのは「家族のために頑張れました」「応援してくれた人がいたから」「コーチやスタッフの恩返しと思って」という言葉でした。

これまで支えてくれた人、応援してくれた人、残念ながら自分の勇姿を見届けることなく亡くなった身近な人。多くの選手が自分のためだけではなく、そんな人たちへの感謝の思いを胸に試合に臨んでいたでしょうか。

人は「誰かのために」という思いを持つことで、より力を発揮できる―。よく言われていることではありますが、代表選手達はそのことを改めて私たちにみせてくれました。

柿ノ木坂ケイ