遺族の視点からみた「樹木葬」

2018年7月17日

遺族の視点からみた「樹木葬」

ひとくちに「樹木葬」といっても、より自然に近い場所から都市部まで、昨今さまざまなタイプがあります。
そんななか、新たな特徴を持つ墓地が今年2月に開苑しました。

森の墓苑』(千葉県長生郡長南町)は、すべての区画で、墓石の代わりに木を墓標とする樹木葬墓地です。

墓地の周辺を上空からの写真で見ると、いくつものゴルフ場に囲まれていることがわかります。また『森の墓苑』の敷地の一部は、かつて工事等に使われる土砂の採掘が行われていた場所だといいます。

墓地を運営する公益財団法人日本生態系協会は、全国各地の土地や森を買い取って自然をそのまま残すというナショナルトラスト事業を行ってきました。
今回、この墓地づくりに取り組んだいきさつについて、主任研究員の服部さんにお話しを聞きました。

「日本全体でみると、自然が破壊されてそのままになっているところが増えています。もっと積極的に土地を確保し自然保護ができないかという課題があるなか、開発の手が及び質が悪くなった土地に樹木を植える墓地をつくり、自然を再生するという事業にいきついたのです」

これまでにも「里山を守る」といった自然保全の目的を持った樹木葬はみられましたが、同協会ではさらに踏み込み、開発等で荒らされた土地を墓地として選び、豊かな自然地へと再生させていくといいます。

具体的なシステムとしては、遺骨の埋葬後、原則30年は管理されますが、その後は周りに新たな木が自然に生えてきたりしても伐採はされません。
そして、今年(2016年)から50年を経た2067年を目処に、樹木の生長に合わせて墓苑全体が一つの森となることを目指した、いわば「半世紀後には全体が森になる墓地」―。

協会ではこれを単なる樹木葬ではなく、〝自然再生葬〟として考えているといいます。

そんな自然保護団体ならではの墓地づくりにあたり、まずは国内外の視察を行ったとか。
服部さんは訪れたイギリスで、樹木葬に関する印象に残る話を聞いたそうです。

「ある樹木葬墓地の担当者の方が『若くして亡くなられた故人のために、あえて樹木葬を選ばれているケースが多い』とおっしゃって。つまり遺族の方にとってみると人が亡くなった時点で『時が止まっている』のではなく、木が育っていく過程を目にすることで年月の経過が実感できる。それだけではなく、そこに眠る故人が新たな命の源になっていることを感じて救われるというのです」

「自然に還りたい」「死んだら木の下に眠りたい」。
その人自身が樹木葬を希望する場合、そんな声をよく耳にします。
一方、この葬法を遺族の側からみると、また違った側面が現れてきます。

家族を亡くした人、子どもの死を先に迎えてしまった人。その人たちが故人を埋葬した場所に、10年20年かけて育つ木を見て悲しみを癒していく―。
樹木葬にはそんな拠り所があることに気づかされました。

柿ノ木坂ケイ