遙かなる上空への散骨? 故人の新たな旅立ち?  ~宇宙葬を考える~

2018年7月17日

遙かなる上空への散骨? 故人の新たな旅立ち?
~宇宙葬を考える~

雑誌などに掲載された『多様化するお葬式』といったタイトルの記事を読んでみると、「家族葬」「直葬」と並んで「宇宙葬」が紹介されていることがあります。

おしりに〝葬〟が付きますが、遺骨をロケットなどに載せて宇宙空間に打ち上げる宇宙葬は「お葬式」ではなく、どちらかというとお墓の方に分類されます。

米国で初めて宇宙葬が実施された1997年から、約20年。日本でも少しずつメディアで取り上げられる機会が増えています。
そんな宇宙葬の実状について、先日、米国の民間ロケット会社の代理店である(株)銀河ステージのメモリアルプランナー佐野さんにお話しを聞いてきました。

同社が携わった2014年2015年の2回の宇宙葬では、それぞれ日本人2名・3名が打ち上げられたそうです。
また今年予定されている宇宙葬では8名の契約があり、今後の生前予約は35名程入っているといいます。

宇宙葬の場合、地上の〝お墓〟の方はどうなるのか気になるところですが「今のところ、先祖代々のお墓に遺骨を入れて『でもお父さんは宇宙好きだったから、一部はそちらへも』という感じになります」と佐野さん。

ほとんどの人が、お墓の納骨と宇宙葬を併用しているといいます。

銀河ステージが提供する宇宙葬では、専用カプセルに入れられる遺骨の量は1~7グラム。つまり、遺骨のすべてを宇宙に打ち上げるというわけではないのです。

「宇宙葬+お墓」となっていることにはそんな事情もあるようですが、佐野さんがあげるもう一つの理由は、私たちが宇宙葬を〝お墓〟と考えるかどうかということです。

「たとえば海洋散骨であれば全骨を海に撒くことができて、その地点でお参りもできます。けれど宇宙葬に関しては、まだまだ本物のお墓ありきでそこに代わるものではない。どちらかというと、ご本人の宇宙への憧れであったり、故人の夢を叶えるという意味合いが強いのではないでしょうか」

同社のHPには、故人に向けた、家族や関係者からのメッセージが掲載されています。
「旅行好きのお母さんにプレゼントします」
「あなたが希望していたように宇宙に飛んでもらいます」
「2人で行きたかった旅行先、宇宙へ妻を送ります」

文面からもわかるように、宇宙葬の契約動機は主に「本人の希望」「家族からのプレゼント」の2つになるといいます。

ところで、そんな数々のメッセージを目で追っているうちに、母親・父親から息子や娘に宛てたものが少なくないことに気がつきました。
つまり、自分たちより早く亡くなってしまった子どものために、親が宇宙葬に申し込んだことになります。

「28年間楽しい思い出を残してくれたことに感謝を込めて、大好きだった白バイで大宇宙を飛び回り、そして星になっていつまでも輝いていてほしいのが両親の願いです」
「母は最後のあなたの夢をかなえてあげたいと思います。そしたらまた、止まってしまった時間がゆっくりと動き始めるような気がします・・・これからもずっとあなたと一緒です。母より」

まだ20代という若さで亡くなってしまった、我が子へ宛てられた文章からその悲しみが伝わってきます。

年齢から考えれば、親が亡くなり、その後に子がというのが順番ですが、そこが逆になってしまう―。身内や親しい人の死はつらいことですが、そのような場合、遺された人は心情的により重い負担を抱えるといわれています。

そこに直面した人が故人を宇宙に送り出すのは、我が子の夢を叶えてあげることであると同時に、なにかその死を受け入れるための弔いの意味を持つことがうかがえます。

これまで、宇宙葬というのは「遙かかなたの空へ向けた散骨」、あるいは「宇宙に墓をつくる」ようなことだと考えていました。
けれどその実際を知るにつれ、墓という領域を超えた、もっと広い意味での供養の方法の一つではないかと思えてきました。

柿ノ木坂ケイ