元気なうちに「行っておきたいところ」はありますか?

2018年7月17日

元気なうちに「行っておきたいところ」はありますか?

最近、「お墓参り同行サービス」を始めるタクシー会社や墓石店をちらほら見かけるようになりました。高齢者など一人だけでは出掛けることが難しい人を対象に、自宅から霊園への送迎、お墓掃除を手伝います。

先日、お墓参り同行をサービスの一環として提供する、(株)ベルサポ(東京都中央区)の代表取締役松下正宏さんにお話しをうかがってきました。

松下さんは大学卒業後、ずっとサラリーマンをしていたそうですが、体を壊したことをきっかけに社会貢献ができる仕事をと、2年前に、高齢者など旅行弱者の旅行や外出の同行サービスを行うこの会社を起業したそうです。

ベルサポでは1.地方から東京に訪れる人への同行 2.東京近郊に住む人の同行を行っています。
最初に想定していたのは「旅行」の依頼でしたが、実際に事業を始めてみると利用者の目的は多岐に渡っていたため、徐々にサービスの範囲が拡がっていったといいます。

現在、会社のパンフレットには、観光の他に「演劇鑑賞」「神社仏閣巡り」「同窓会」「入退院」「ショッピング」「食べ歩き」「冠婚葬祭」「里帰り」「墓参り」への同行が案内されています。

松下さんがこれまで最も印象に残っている依頼というのは、里帰りを希望した、東京在住の70代後半の女性のケースだったそうです。
「ご主人を亡くされてからずっと自宅に引きこもり、うつ状態だったようです。いろいろな事情から20年ぐらい故郷に帰っていないということでしたが、打ち合わせにお邪魔すると次第に明るい表情となり、『旅行に行くから、これからは体力をつけなくちゃ』と前向きになっていきました」

女性スタッフとともに故郷の四国に帰った女性は、親戚宅を訪ね、また先祖代々のお墓があるお寺に足を運びました。
そして、墓前で手を合わせると「これで思い残すことがなくなりました」と感謝の言葉を口にしたそうです。

松下さんのお話を聞いて意外だったのは、ベルサポへの依頼は「観光名所へ行ってみたい」「演劇を鑑賞して美味しい食事を」というような純粋な自分の娯楽目的というより、この女性のように「これまで果たせなかった、気がかりなことを遂げる」という動機の方が多いという点です。

「何とか自分が動けるうちに」と、兄弟が眠る靖国神社への参拝を希望する人。たとえば、高齢者施設や病院にいる親戚や知人へのお見舞い。そして里帰り、墓参り。
「『ヨーロッパに行きたい、京都にも』とポジティブな気持ちのケースと、自分の想いをなんとか果たしたいというケースがありますが、後者の依頼が圧倒的に多いんです。長年不義理にしてきたこと、どこか自分のこころにつっかえていた部分を楽にしたいという方々ですね。その目的を果たしたときに『ああ良かった。ホッとした』という感想を漏らされます」

題名は忘れてしまいましたが、余命を知った老人が、これまで自分に関わった人たちを訪ね歩くという海外の映画があったことを思い出しました。

年齢を重ねて人生の終わりが見えてきたとき、あるいは健康でいられる時期が迫っていると感じたとき、私たちが他を差し置いてもやっておきたいと考えること―。それは、亡くなった方を含め、今生縁があった人との再会や交流なのかと思いました。

柿ノ木坂ケイ

(株)ベルサポ
http://www.berusapo.jp/