霊園の施設は気になりますか? ―グッドデザイン賞を受けた管理棟を訪ねて―

2018年7月17日

霊園の施設は気になりますか?
―グッドデザイン賞を受けた管理棟を訪ねて―

皆さんが、霊園見学で重視するのはどんな点でしょうか。
「自宅から近い」「価格」「霊園内の雰囲気」…

『いいお墓.com』のアンケートでは上の条件が上位を占めていますが、
「霊園の施設」を一番に挙げる人はそれほど多くないようです。

霊園の施設とは、管理棟や、儀式をあげたり会食する目的で使われる建物のことです。
施設があまり霊園を選ぶ基準になっていない理由は、どこも似たり寄ったり、あるいはそれほど力を入れているところが多いとはいえないからかもしれません。

昨年末、西武球場近くの狭山湖畔霊園(埼玉県所沢市)を訪ねました。1969年に開設した霊園ですが、老朽化により建て替えられた管理休息棟と礼拝堂が2014年度のGOOD DESIGN賞を受賞したといいます。

霊園入り口側にある管理休息棟は円形で、西武球場のような屋根、そして全面がガラス張りです。入り口を入ると建物の円形に沿う形で、トイレ、線香・花売り場、受付、休息室のスペースになっています。

設計を担当したNAP建築設計事務所の代表取締役中村拓志さんは、建築の構造を考える前に、霊園の現地調査を行ったといいます。

「まずはスタッフと共に、どの時間帯にどれだけの人が来て、実際にどういう動きをするのか観察しました」

霊園は一般的にお盆やお彼岸は訪れる人が多く、平日は少なめ。そのため調査は混雑時と平日に分けて行い、その結果を受け、以前は一番奥にあったトイレを、新しい管理棟では手前に持ってくるなど一から配置が見直されました。
また、中心部を霊園スタッフの場所とすることで混雑時でも対応できるレイアウトを考えたそうです。

管理休息棟の中に一歩踏み入れた印象は「心静かになれる空間」でした。

この建物ではダウンライト照明を一切使わず、自然光だけを取り入れているといいます。
また、傘の骨組みのように放射線状に拡がる庇が、周囲の景色を遮断します。
建物内に人工的な明るさはないものの、建物を囲む水盤にあたった光がキラキラと、マツ材で造られた庇や天井に反射していることがわかります。

「自然光を存分に入れることで、季節や自然のうつろいを感じて欲しいと考えました」と、中村さん。

霊園の施設においてそのようなコンセプトを導き出したのは、ご自身のお墓参りの体験がもととなったそうです。

「墓前で語りかけているときに、墓石に映った木々がザワザワと動いて、雲がさーっと流れました。その瞬間、祖父が返事をしてくれたような気がしたんですね。それで空間全体を自然現象の媒体にすることで、故人と対話する場所にできるのではと考えたのです」

中村さんは、単にその使い勝手の良さだけではなく、霊園を訪れる、悲しみや故人への想いを抱えた人々に寄り添う空間が必要だと考え、その設計に結びつけたといいます。

建物を見学させて頂きながら思わず「ここを仕事場にしたいです」などと言って、霊園の方の失笑を買いましたが、落ち着いて物思いにふける環境が整えられた場所だと感じました。

私たちが霊園・墓地に足を運ぶのはお墓参りだったり、亡くなった家族を納骨するとき、あるいは何回忌といった供養のタイミングです。
そんなとき、敷地内に内省的に過ごすことが出来る場所を求めることは
、ぜいたくでしょうか。

お墓が建立される墓所ではなく、提供する側にも、利用者にも注目されにくい箇所。
それでも、利用者の心情から考えると大切な場所になり得る―。建物を巡りながら、そんなことに気づかされました。

柿ノ木坂ケイ

「グッドデザイン賞」:
公益財団法人日本デザイン振興会が主催する、総合的なデザインの推奨制度。1957年に通商産業省(現経済産業省)によって創設された「グッドデザイン商品選定制度」が母体となり、その後約60年にわたって実施される。
デザインが「くらしを、社会を、豊かにしうるのか」という効果・効用がその評価基準としてあげられている。