施設の子と親の共同墓 ~子どもたちにとっての〝お墓〟とは~

2018年7月17日

施設の子と親の共同墓
~子どもたちにとっての〝お墓〟とは~

虐待を受けたり経済的理由などから、親による養育が困難と判断されて児童養護施設に入る子どもたちがいます。子どもたちの退所時期は18歳の年度末が一般的ですが、高校に進学しない場合、中学卒業時点、つまり15歳で独立しなければいけないケースもあるといいます。

頼る親がいない彼らは、まだ10代の若さで仕事や住まいを確保しなければいけない状況におかれることになります。また、自分が生きていくための課題の他にも、「亡くなった親の遺骨をどうするか」といった問題を抱えることがあるといいます。

そんな児童養護施設入所者及び卒園者のために、都内のお寺に共同墓をつくった、NPO法人「社会的養護で育つ子どもたちの地位向上ネットワーク」(東京都世田谷区・略称OAC)理事長の坂本輝子さんにお話しを聞いてきました。

就労や進学など、施設の子どもたちの社会的自立を支援するNPO活動に取り組んできた坂本さんが墓の建立を考えたのは、都内の児童養護施設で暮らす、ある中学生の女の子の言葉がきっかけだったそうです。

「女の子の父親は数年前に病死しましたが、父子家庭で、親戚関係で頼れる人はいなかったため、遺骨は女の子の元にきました。もちろん市区町村が設けた無縁墓に納骨することもできましたが、その子は『合同の墓では名前も残らないし、お父さんが知らないところに行くのは嫌』と言うので、じゃあお墓を建てようとシンプルな考えに至りました」(坂本理事長)

施設入居中に子どもが亡くなった場合、その遺骨を納める厚生労働省管轄の墓があるものの、入所する子どもの親が亡くなっても特に用意された墓はないといいます。

「たとえ虐待のため入所していたとしても、子どもが一人であればその子の元に親の遺骨がきます。役所から受け取った子どもはどうしていいかわからないし、簡単にお墓を用意できるわけでもありません」
実際、施設を出た後、引っ越しの度に亡くなった親の遺骨を持ち歩くケースも珍しくないと、坂本さんは話します。

坂本さんはその資金に充てる寄付を集め、児童養護施設・里親に委託された子どもたちの肉親、及び当事者(子ども)のための共同墓(慰霊納骨堂)を建立しました。

そして今年1月。共同墓(延命寺・東京都荒川区)の魂入れと、前述した中学生の女の子の父親を含め、2柱の納骨式が行われました。中学生の女の子はその後、何度もこの墓に足を運んでいるそうです。

坂本理事長は、共同墓は遺骨を納める所というだけではなく、子どもたちが親に向き合う場所として必要だと話します。

「いろいろな事情で施設に来た子どもたちが、本当の意味で自立するためには、『どうして自分は他の子と同じように、親と一緒に暮らせないのか』といった疑問を、直接親にぶつけることが一番なのです。もちろん親が生きていれば実際に話すことができますが、亡くなってしまうとそれができない。そのための場所が必要だと思ったのです」

そして、子どもたちが親と対峙するための場所は、お墓が適していると考えたといいます。

「そこに行けば実際の体の一部のお骨があり、魂があるということは特別な場所になりますよね。
お墓は亡くなった方のためのものですが、私はどちらかというと遺族にとって必要だと考えています。人は生きていくために、必ず人生のどこかで、死んだ人と向き合わなくてはいけない時期がくるのではないでしょうか。その場所としてお墓があった方がいいという気がします」

施設の子どもたちのお墓事情を教えて頂くとともに、改めて〝お墓〟というものの存在意義を考えさせられるお話しでした。

特定非営利活動法人 社会的養護で育つ子どもたちの地位向上ネットワーク:
〒157-0072 東京都世田谷区祖師谷3-1-15-208
http://www.oac-jp.org

柿ノ木坂ケイ