自宅マンションの敷地に、お墓が出没?!

2018年7月17日

もしも自分の住む高級マンションの敷地に、お墓ができるとしたら―。日本ではなく、シンガポールでの話です。

問題が起きているのは、シンガポールのセン・カン地区ファーンヴェールに建設中のマンション。
シンガポールは経済成長のため、移民や外国人労働者を多数受入れ、その国民向けの集合住宅を供給しているとか。

このマンションもその一つで、総戸数は1150戸。金額はやや高額ながら、間取りなどを注文できるため人気を呼び完売。
しかし、昨年末に現地の新聞が、「敷地内に納骨堂を備えた中国寺院ができる」と報道したため、購入した人々が契約の取消しを求め騒ぎとなったといいます。(「迷惑施設に揺れるシンガポール」 2015.1.8 SankeiBiz)

シンガポールは中国系、マレー系、インド系、ユーラシア系などで構成される他民族国家として知られています。記事によると、キリスト教徒やイスラム教徒が多いことから土葬が基本となり、以前から「墓地不足」が問題になっているとか。
今回の騒ぎの背景にはそんなこともあるようです。

ところで、もし同じことが日本の都市部で起きたとしたら……。「敷地内に納骨堂があれば、お墓参りが便利」という考え方もありますが、住民全員の賛同を得ることは、やはり難しいように思います。

「ニンビー=NIMBY」という言葉をご存知でしょうか。「not in my backyard」(私の裏庭にはつくらないで)の頭文字をとった用語です。その施設が必要だとわかっていても、自分の住む家のそばにつくられるのは困る、という考え方を表します。

例えばゴミの焼却炉、火葬場や葬儀場もそんな「迷惑施設」と受け止められ、それらが我が町にできるとなると、反対運動が起こりがちです。
その場所に施設ができることで、地価が下がるという心配もあるのでしょう。

霊園や墓地もまたしかり。死んだ人を埋葬する場所は必要だと認めていても、それが住宅地に近いほど、開設反対の声が挙がるという現状があります。

……と、これは日本での話ですが、それとは異なるアメリカの事情について聞かせてくれたのは、日本にエンバーミング、グリーフサポートを普及させた第一人者、橋爪謙一郎氏です。
橋爪さんは現在、葬祭業のコンサルティング業にも携わり、海外の供養業界の視察ツアーを提供しています。先日、欧米の霊園事情についてお話しを伺ったところ、そんな話題となったのです。

アメリカでは霊園ができる際の反対運動などは起こらず、逆に周辺の地価が上がる傾向があるといいます。
その理由の一つは、近辺の住人は顧客になる可能性が高いこともあって、例えばイベント会場として霊園を使ってもらうなど、霊園が常に地域の人に受入れてもらう努力をしていることだとか。

「ガーデニングなども徹底していますし、その結果、霊園に人が訪れています。ジョギングコースになっているところもあります。ですから意外に墓地の周りのマンションの値段が高かったりするんですね。そこには高い建物もないし、騒音もない。居心地の良い公園がそばにあるようなものですから」(橋爪謙一郎氏)

「いいお墓.com」サイトの行った『お墓の消費者全国実態調査』では、霊園・墓地の選択ポイントとしてダントツ1位となったのは「交通・アクセス」でした。2位以下の「園内の雰囲気」「価格」を3倍近く引き離しています。
http://www.e-ohaka.com/research/research_1501/research_02.html

つまり、自分たちが買い求めるには、お墓参りが便利な近くがいい。けれど、不特定多数の人が入るお墓は、住まい近辺にあっては困るという考え方が日本での多数派となるでしょうか。

果たして、日本の住宅地にアメリカの、環境の担保されたような霊園ができたとき歓迎ムードになるのか。それとも、やはり「ニンビー」的思考を変えることは難しいのか―。

ちょっと気になるところです。