お墓の永代使用料と使用権 – 承継方法や手数料など

お墓を建てる際には永代使用料を支払い、お墓を建てる土地を確保します。一般的に不動産の売買では土地そのものの所有権を買うことができますが、お墓においてはあくまで墓地の所有者からその土地の使用権を取得するという扱いになっています。

また、お墓や仏壇などは、法律上「祭祀財産」と呼ばれ、使用者が亡くなった場合は民法の規則に従って承継されます。近年は核家族化などによってお墓を受け継ぐ人が減少しているため、墓地の使用権に関する親族間の揉め事も少なくありません。

ここでは、お墓の使用権の承継方法や手数料など、使用権にまつわる基礎知識について解説します。

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永代使用料って何?

お墓を購入する際に必ず必要になる永代使用料。実際にはどのようなものなのでしょうか。

ここでは永代使用料の意味と、永代使用料を支払うことで得られる権利についてご説明します。

・永代使用料はお墓を建てる場所を使う権利を得るための費用です。
・永代使用権は承継することができます。

お墓の区画の権利の基本とは

「お墓を購入する」とは言いますが、そのお墓の区画となる土地を購入できるわけではありません。あくまで墓地の所有者からその区画を使う権利を得ることになります。この権利のことを「永代使用権」といい、それに対して支払う費用を「永代使用料」といいます。

例えば土地など「不動産を買う」という場合、自分の財産として所有権を得ることを指しますが、お墓の場合はあくまで「使用権」なのです。そして「永代」とあるように、代(お墓を引き継ぐ世代)が続く限り使用できるということになります。

お墓にかかる費用と平均価格 - 永代使用料、墓石費用、管理費など
お墓購入に要する費用は、主に「永代使用料」「墓石費用」「管理費」の3つの要素で成り立っています。霊園や石材店のパンフレットや、新聞折込チラシなどの価格で、永代使用料と墓石費用を合わせた「墓石一式○○万円」と表記される場合もありますが、「一式の中に何が含まれているのか」をしっかり確認しておきましょう。

お墓の相続(承継・継承)の流れ

お墓の使用者が亡くなった場合、お墓を継ぐ人を決める必要があります。
お墓を継ぐことを、法律では「承継」と言います。一般的には「継承」という場合もあります。

・お墓の承継者については法律で優先順位が決められています。
・お墓の承継・継承については、相続税はかかりません。

民法ではお墓の承継者について、以下の優先順位が決められています。
1.被相続人(亡くなったお墓の使用者)の指定した人
2.慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべき人
3.(1にも2にも当てはまる人がいない場合)家庭裁判所の指定
(民法 第八九七条「系譜・祭具・墳墓の承継」より)

例えば、亡くなった父親が「お墓は次男に承継する」と口頭で伝えるか遺言して亡くなれば、まずその遺志が優先されます。一方、特に遺言はなく、その地域で長男が引き継ぐという慣習があれば、長男が承継します。

どちらにも当てはまらず、承継者についてもめるような場合は、関係者が調停や審判の申し立てをして、家庭裁判所で決めることとなります。

お墓の承継・継承に税金はかかるの?

なお、お墓は仏壇や位牌などと共に「祭祀財産」と呼ばれます。相続財産とは違い、これらは承継しても相続税はかかりません。

またお墓を承継したからといって法律上の手続きは必要ありません。ただし、各霊園・墓地では使用者が変わる場合、その変更手続きを義務づけています。その際、手数料がかかることがあります。

承継後そのままにしておいて、使用者不明となったり管理費が納められない期間があると使用権を失うことがあります。

使用者が代わる場合は、すぐに届け出をしておきましょう。また寺院墓地では、檀家としてのお付き合いも始まるため、ご挨拶に伺うことをお勧めします。

もしお墓を継ぐ人がいなくなったら?

民法では、お墓の承継者の優先順位を規定していますが、核家族化・少子化が顕著な昨今は、むしろ、「お墓を引き継ぐ人がいるかどうか」が問題となるケースがあります。

・お墓の承継者は霊園、墓地によって条件が異なります。
・承継者がいない場合は、永代供養墓への改葬などの方法もあります。

 

お墓の跡継ぎとなる承継者がいない場合は

霊園では承継者について「親族」とだけ決めているところもあります。その場合、自分に跡継ぎがいないとしても、例えば弟の子ども=甥っ子などに打診してみる方法も考えられます。

また、法律上、承継者が女性(娘)でも問題はありません。ただ、お寺など経営主体によってはそれを拒むケースもあります。「女性が引き継ぐと結婚して姓が変わってしまう可能性がある。ずっと墓守をしてもらえるか不安がある」といった理由からです。

それぞれの霊園、墓地によって条件がありますから、誰が承継者になれるのかという不安があれば、事前に経営主体やお寺に確認しておきましょう。

承継者がいない場合

どうしても承継者がいないという場合、通常、お墓の使用権を失うことになります。「永代使用権」は、遺族へ承継することはできますが、譲渡・転売はできません。

各使用規定に基づき、数年後に権利は消滅、遺骨は無縁墓や合祀墓に移されます。そして多くの場合、永代使用料は戻ってきません。

墓所を所有者に返還する際は、同じく使用規定により墓石を撤去する費用も原則、自己負担となります。

つまり継ぐ人がいなければお墓を失い、永代使用料は返還されず、かつ新たな費用もかかってしまうことになります。

なお、そうしたケースでも、遺骨は同じ墓地・霊園内の合祀墓や、他の永代供養墓などに移す(=「改葬」)ことができます。お墓の承継者がいなくなる可能性が高いという場合は、そうした選択肢を早めに検討します。

また寺院墓地では、供養いただきたい年数分の管理費をまとめて支払うことで、お墓をしばらく残していただけることもあるかもしれません。まずは住職に事情を伝え、相談してみましょう。

霊園がつぶれたら?

承継者不在という以外にお墓を失うケースとしては、霊園が倒産してしまうことなどが考えられます。基本的に永続的な性質を持つ組織がお墓の経営主体となりますが、それでも経済的な事情により、霊園がなくなることも起こり得ます。

・営利を目的とする企業は、霊園や墓地の経営主体となることはできません。
・墓地を開設するためには許可が必要で、各自治体が定める手続きや、開設の基準・制限の条件を満たすことが前提となります。

霊園・墓地を経営主体となれるのは?

お墓というのは亡くなった方の遺骨を納めて、お参りする場所です。霊園・墓地はそうした公益性や永続性が求められることから、その経営は誰でもができるわけではありません。

法律において、経営主体として地方公共団体(都道府県や市町村)を原則としています。その他は寺院などの宗教法人または公益法人のみとなっていて、営利を目的とする株式会社などは、霊園や墓地の経営主体として認められていません。

霊園や墓地を開設する際には許可が必要

墓地を開設する場合、都道府県知事の許可を受けることが法律で決められていました(「墓地、埋葬等に関する法律 第10条」)。

しかし、平成23年のに公布された「地域の自主性及び自立性を高めるための改革の推進を図るための関係法律の整備に関する法律」によって、平成24年4月1日からは都道府県知事、また市や特別区(東京23区)にあっては市長または区長の許可が必要となっています。

このように霊園や墓地を開設するにあたっては、各自治体が定める手続きや、開設の基準・制限の条件を満たすことが前提となりますが、数は少ないものの、残念ながら開設後に倒産してしまう事例も見られます。

自治体が運営する公営霊園であれば、経営が破綻することは考えられにくいことですが、その他の経営主体の場合、まったくあり得ないこととは言い切れません。

利用する霊園が倒産してしまえば、そのままお墓が使えるのか、あるいは霊園自体が存続するのかといった問題に直面するのは、お墓の使用者です。

不安があれば、購入する前に経営主体管理会社の財務状態を調べてみます。また次のようなこともチェックしてみましょう。

  • 宣伝費をかけ過ぎていないか?
  • 開園後、ある程度区画は埋まってきているか?
  • 開園後も園内の施設や通路などの清潔さは保たれているのか?

将来のことも考え、納得してから契約することが大切です。

まとめ

「永代使用料」とは、お墓を建てる土地を使用する権利(永代使用権)の費用のことです。永代使用権は他人へ譲渡・貸与はできません。

また永代使用権は承継者が続く限り存続しますが、途絶えた場合は所有者に返還することになります。その場合、基本的に永代使用料は返還されることはありません。