生活圏で散骨はあり?―熱海の計画に反発の声―

霊園や火葬場が新しく建設されるとなると、その周辺に住む方たちから反対の声が上がるといことは度々耳にしますが、今回は散骨場です。
 
熱海の山林に整備予定の散骨場に、住民が反発していることが地元新聞などで報じられました。
(「熱海に『散骨場』建設計画…周辺住民は猛反発 2014/05/17読売新聞/「熱海に散骨園計画 住民反対『生活圏近い』2014/05/20中日新聞)
 
計画では約1700平方㍍の土地に8000区画をつくり、一区画30㎝角を9万円(税抜き)で販売するのだとか。
初島も見渡せる、標高約220㍍の急斜面一帯を散骨場にする計画のようです。
 
予定地は、その周辺の自然景観を維持するため基準が設けられた「風致地区」。樹木の伐採や形状の変更は市の許可が必要ですが、業者は3月に書類申請してすでに許可を受けているということです。
 
その後5月15日に近辺の町内会連合会が市の担当者などを招いた説明会には約150名の住民が参加。「熱海のイメージダウン」などとする意見が多数を占めたと言います。
 
熱海と言えば、温泉や海水浴が楽しめる観光地として知られています。観光スポットでもある熱海城が近く、保養所やマンションも点在するとのこと。「生活圏に近すぎてふさわしくない」と反発する声があるようです。
 
これに対し業者は、「墓地ではなく法的な問題はない」とコメント。
散骨方法は「機会でパウダー状にした遺骨を、植物の栄養剤と水を混ぜ合わせてジョウロで散布」するため、周辺に飛んでいく心配はないとしているそうです。
 
日本の場合、海での散骨が主流ですが、こちらは陸地に遺骨を撒く散骨場です。また、この葬法から「樹木葬じゃないの?」と思われる方もいるかもしれませんが、遺骨を土中に〝埋める〟のではなく、土の上に撒くのであれば散骨になります。
 
実はこの〈散骨〉となると、『墓地、埋葬等に関する法律』(通称、墓埋法)では、特に規制がありません。この法律では埋めることだけを前提として、〝撒く〟ことを想定していないからです。
 
つまり散骨場をつくろうとしたときに、墓地として特別な許可は求められないことになります。業者が「散骨場は墓地ではない」としているのは、このためです。現時点では散骨は法律外の葬法なのです。
 
ただし、各自治体レベルでは、散骨を規制・禁止しているところも出てきています。
2004年に北海道長沼町でNPO法人が、樹木の根本に遺骨を撒く「散骨樹木葬」を始めました。これに地元住民が反発。2005年、自治体が「墓地以外に焼骨を散布してはならない」という禁止条例を施行しています。
 
このように散骨場の計画・実施に周辺住民が反対→自治体が散骨を禁止する独自の条例を発行する事例は、埼玉県秩父市や静岡県御殿場市でもみられます。
 
国レベルでは規制がないものの、今のところ地域ごとに話が持ち上がった時に法整備をする。まるでモグラ叩きのように、その場をしのいでるという観があります。
 
散骨に関して、1991年当時の法務省は「節度を持って葬送を目的として行う限り、刑法の遺骨遺棄罪には当たらない」とコメントしていますが、実際には「節度を持って」というだけでは収まらない事態も起きています。
「散骨は法律上のお墓ではない」といった解釈論に立つのではなく、墓埋法の改正も含め、ルールづくりが必要な時期にきているのかもしれません。
 

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柿ノ木坂ケイ プロフィール

プロフィール

1964年生まれ。東京都立大学人文学部社会学科社会人類学専攻卒。タウン情報誌編集部を経てフリーライター。 3年前義母をなくし、お墓がない現実に直面。購入まで苦労したことがきっかけとなり、意外と知らなかったお墓について調べ、著書『間違いだらけのお墓選び』をまとめる。
現在、「明るくわかりやすくお墓を語る」をモットーに、消費者の立場から見た“お墓”についての講演や関連記事の執筆などで活動中。

【 著書 】

『間違いだらけのお墓選び-買ってわかったお墓事情あれこれ』
2005.11刊/情報センター出版局(1400円+税)

〔第1部:お墓購入ドタバタ体験記〕

年齢も趣味も違う家族が一つのものを買うのは大変なこと。
ましてやそれが“お墓”であればモメるのは当然?!著者と家族の笑える(?)お墓探しの日々を綴る。

〔第2部:お墓に関する49の基礎知識〕

誰もがいつかはお世話なるものなのに、よくわからないもの、それがお墓。その購入の実体験をもとに「これだけは知っておきたい」という知識をまとめた。イラストやフローチャート入りで“初心者”にも楽しくわかりやすく、お墓選びのツボを伝える。