火葬の起源と400年ぶりの復活と

今年2月4日、長崎県教育委員が、大村市竹松遺跡で弥生時代後期のものとみられる祭祀遺構・墳墓群が出土したことを発表しました。その遺構で、焼骨を使った弔いの儀式の形跡が発見されたとか。
土葬が多数だったと考えられている弥生時代に、火葬が行われていたことになります。

このニュースを聞き、「日本で最初の火葬は確かお坊さんだったのでは?」と疑問に思う方もいるかもしれません。
確かに、『続日本記』には西暦700年に法相宗の祖「道昭」の死の際、始めて火葬が行われたと記されていますが、近年の考古学的発掘調査・研究においては、それ以前にも火葬が行われていたことが指摘されています。

大阪、静岡、兵庫などでは、6世紀末から7世紀前半にかけて造られたとみられる、「横穴式芯粘土室」「かまど塚」などと呼ばれる古墳のスタイルが確認されています。埋葬後に内部で遺体を燃やしていたと考えられています。

今回の長崎県の遺跡での発見が証明されれば、火葬の起源はさらに時代を遡ることになります。

ところで、天皇で初めて火葬にされたのが、道昭の死の3年後に亡くなった持統天皇です。その後、文武、元明、元正の各天皇と4代に渡り火葬が続きますが、次の聖武天皇は土葬でした。
聖武天皇といえば、国分寺建立の詔・大仏造営発願の詔を発した強力な仏教推進者であったにも関わらず、です。

持統天皇が火葬という手段を選んだのは、儒教精神にのっとり葬送全般の簡略化を考えたからだと言われています。釈迦が火葬されたことにより、イコール仏教の葬法と考えられる面がありますが、この時代の火葬は必ずしもそれだけの理由で行われたわけではないようです。

火葬=仏教の教えからくるものとして抑えつける動きは、明治維新後に顕著でした。江戸時代に幕府から管理されながらもその保護下にあった仏教は、神道の国教化を目指す新しい政府の誕生で立場が変ります。
1868年神仏分離令に続き、1873年には火葬禁止令が出されます。その時の太政官のコメントは、「火葬は仏教の教えから出たもの。野蛮、惨劇甚だしきもので、人類には忍びがたいところだ」といったものでした。

これは一般社会に対する政策でしたが、天皇の葬法については、それぞれの意向などから火葬や土葬の時代が繰り返されながら、江戸時代初期から原則、土葬に。また法的には1926年(大正15)には皇室喪儀令が制定され、天皇と皇室の葬法は土葬が前提とされました(戦後1947年に廃止)。

そして昨年11月。宮内庁が、今後の陵と葬儀のあり方を発表しました。陵(お墓)については、天皇・皇后陵が寄り添うように配置され、敷地面積を昭和天皇・香淳皇后陵の8割程度へ。また葬法は火葬への転換が示されました。

そもそも陵・葬儀の見直しは、両陛下の、国民生活への影響を少なくすることを考慮し検討して欲しいという意向を受けてのことでした。

火葬への変更については、国内で火葬が一般化していること。そして天皇、皇后両陛下が御陵の簡素化という観点も含め、火葬が望ましいというお気持ちを抱いていたことが理由としてあげられました。

これまで天皇の葬法は土葬・火葬の両方が行われてきました。その決定には外来宗教などの影響もみられました。歴史の節目に、政権の思惑が反映されることもありました。

天皇では最後の火葬といわれる1617年の後陽成天皇の葬儀から約400年を経て、火葬が復活することに。それは信仰によるものでもなく、政策でもなく、今を生きる人の価値観がより重視された所以の転換といえそうです。

>柿ノ木坂ケイの「ちょっと気になるお墓の話。」一覧へ戻る

柿ノ木坂ケイ プロフィール

プロフィール

1964年生まれ。東京都立大学人文学部社会学科社会人類学専攻卒。タウン情報誌編集部を経てフリーライター。 3年前義母をなくし、お墓がない現実に直面。購入まで苦労したことがきっかけとなり、意外と知らなかったお墓について調べ、著書『間違いだらけのお墓選び』をまとめる。
現在、「明るくわかりやすくお墓を語る」をモットーに、消費者の立場から見た“お墓”についての講演や関連記事の執筆などで活動中。

【 著書 】

『間違いだらけのお墓選び-買ってわかったお墓事情あれこれ』
2005.11刊/情報センター出版局(1400円+税)

〔第1部:お墓購入ドタバタ体験記〕

年齢も趣味も違う家族が一つのものを買うのは大変なこと。
ましてやそれが“お墓”であればモメるのは当然?!著者と家族の笑える(?)お墓探しの日々を綴る。

〔第2部:お墓に関する49の基礎知識〕

誰もがいつかはお世話なるものなのに、よくわからないもの、それがお墓。その購入の実体験をもとに「これだけは知っておきたい」という知識をまとめた。イラストやフローチャート入りで“初心者”にも楽しくわかりやすく、お墓選びのツボを伝える。