遺体の分解を促進するため、石灰液を注入?!

人が亡くなったら、土中に埋める。あるいは、火葬した遺骨を骨壺に入れて埋葬する。その国や地域によって葬法はいろいろとはいうものの―。

今は火葬率が高まるノルウェーですが、土葬が主流だった第二次世界大戦後、「遺体をビニールでくるむ」ことが一般化したそうです。

ビニールで覆われた遺体を棺に納め、土中に。大方の想像通り、遺体の分解がビニールによって妨げられる。年数は経っていても、遺体は土に還っていないことが判明したそうです。

ノルウェーでは、行政によってお墓の区画が提供されます。墓所使用料はほとんど税金でまかなわれ、使用者は管理料のみ支払います。ただし、使える期限が15年、20年などと決められていて、その区画は再利用されるのです。
ところが、遺体が残っていれば、次の貸出しができないことになります。

この問題を解決するべく、新たな技術が開発されたといいます。Kjell Larsen Ostbye氏は、土、そしてビニールに穴を開け、そこに石灰をベースに作った溶液を入れて遺体の分解を促進する方法を発案。実際にやってみると、2週間で穴に草が生え、1年以内に遺体が分解されたとか。
ビニールでくるまれた遺体はまだ約35万体あるとみられるため、氏は会社を設立してサービスをビジネス化したそうです。
(ウォールストリートジャーナル『ビニールで遺体埋葬のノルウェーの墓地問題』2013.10.14)

では、なぜ遺体をビニールをくるむ慣習が生まれたかというと、そのやり方が、より衛生的だと考えられたためだとか。
約70年後に解決方法があみ出されたものの、費用はかかるし、重機も大がかり。石灰の粉なのか、辺りに白い噴霧が立ち上りすごいことになっている映像は、ブラックジョークとしか思えない様相でした。

ところで、まだ土葬率が半数以上を占めるアメリカでは、遺体にエンバーミングという手法を施すことがよくみられます。全身の血液を防腐液と入れ替えて腐敗の進行を防ぎ、かつ血色良く見せる遺体の保全技術です。なるべく故人を生前の姿に近づけることで、遺族の悲しみをやわらげる目的もあります。

国土が広大で、家族が1カ所に集まるまで時間がかかるという事情。キリスト教の復活思想もあり、アメリカそして欧を中心に普及しました。

そのエンバーミングされた遺体だからといって、施術後の状態が永久に保たれるわけではありません。
防腐液の主成分はホルムアルデヒドですが、埋葬した遺体からそれが漏れ出し地下水や土壌を汚染する危険性があるのではないか。環境保護団体からそんな指摘があるといいます。

そのまま土中に埋めれば年月を経て土に還るところを、その時の価値観や宗教観で、ビニールを巻いたり薬品を注入したりと、何かしら手を加えてしまう。そのことが自然な分解を妨げ、環境にも負荷をかけてしまう―。
人間というのは、なんともやっかいな生き物です。

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柿ノ木坂ケイ プロフィール

プロフィール

1964年生まれ。東京都立大学人文学部社会学科社会人類学専攻卒。タウン情報誌編集部を経てフリーライター。 3年前義母をなくし、お墓がない現実に直面。購入まで苦労したことがきっかけとなり、意外と知らなかったお墓について調べ、著書『間違いだらけのお墓選び』をまとめる。
現在、「明るくわかりやすくお墓を語る」をモットーに、消費者の立場から見た“お墓”についての講演や関連記事の執筆などで活動中。

【 著書 】

『間違いだらけのお墓選び-買ってわかったお墓事情あれこれ』
2005.11刊/情報センター出版局(1400円+税)

〔第1部:お墓購入ドタバタ体験記〕

年齢も趣味も違う家族が一つのものを買うのは大変なこと。
ましてやそれが“お墓”であればモメるのは当然?!著者と家族の笑える(?)お墓探しの日々を綴る。

〔第2部:お墓に関する49の基礎知識〕

誰もがいつかはお世話なるものなのに、よくわからないもの、それがお墓。その購入の実体験をもとに「これだけは知っておきたい」という知識をまとめた。イラストやフローチャート入りで“初心者”にも楽しくわかりやすく、お墓選びのツボを伝える。