海に骨を撒いたら、供養はどうするの?

先日、散骨セミナーと連動した、「お墓どうしますか?」というテーマのトークセッションに参加したときのこと。

「散骨にした場合、位牌がないし供養はどうしたらいいですか?」と質問する年配の男性がいました。
最初は「散骨」=「位牌がない」ということが結びつかず、その意味がわかりませんでした。

散骨はお骨の行き先の一つで、葬儀とか供養の方法を限定するわけではありません。お葬式にお坊さんを呼んでお経をあげてもらい、仏壇や位牌を作ることもできます。もちろん逆にそこを省いたり、他の方法を選んでも構いません。

「骨を撒いてしまったら、あとは供養も何もしない」という決まりはありませんが、その男性は〈散骨〉が自由な葬法、つまり無宗教のやり方ととらえたのか、仏式のように位牌を作らないと考えていたようです。

散骨がまだまだ知られていないことを実感したわけですが、一方で、この方の言う「散骨の場合、供養はどうするか?」という問いには、この葬法を考える上で大事な要素が含まれています。

今、〈散骨〉をする方が取り入れている方法は、遺骨の一部をお墓に納めたり、小さな骨壺などに入れて自宅に置いたりすることです。
少し前までは、全ての遺骨を撒いた遺族から、「お墓参りする場所がなくて寂しい」と後悔の声があがることは少なくありませんでした。

日本人にとって「お墓参り」は、一種、年中行事のようになっている観があります。お盆やお彼岸になると、首都圏の霊園が集中している地域が、お墓に向かう車で大渋滞を引き起こすことも恒例化しています。

ある企業のアンケートによると、日本人のお墓参り平均回数は2.8回/年。平均ではありますが、1年に複数回足を運んでいることになります。
子どもの頃からそのような慣習に従っていれば、その時期にお墓に行けない、故人に手を合わせる場所がないとなると、するべきことができない物足りなさ、寂しさを感じるのではないでしょうか。

ところで、散骨を希望するのは「海が好き」「自然に還りたい」と考える人かと思いきや、意外に多い理由は「お墓参りの負担をかけたくないから」ということです。

散骨の場合、一般的なお墓のように、遺骨をどこかに納めるという手段を取らないため、お墓参りする場所が明確に残るとは言えません。「だからあえて選ぶ」人もいるのです。
けれど、もし「迷惑をかけたくない」という一方的な気遣いから散骨という方法を指定した場合、それがかえって子ども達を戸惑わせてしまう可能性もあります。

散骨を選んではいけないという意味ではありません。
一般的なお墓にしろ、散骨にしろ、「遺骨の行き先」というのは、後に遺された人達の供養の場なのです。故人を弔う場所をどう考えるかは、葬法を決める上で大切なポイントになります。

「お墓をどうしよう?」と迷った時には、「亡くなった人をどう供養したいのか」「自分はどう供養されたいのか」という観点から考えてみて下さい。一人よがりにならず、ご家族や子ども達の意見を聞くことがよりよい選択につながるはずです。

海に骨を撒いたら、供養はどうするの?()

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柿ノ木坂ケイ プロフィール

プロフィール

1964年生まれ。東京都立大学人文学部社会学科社会人類学専攻卒。タウン情報誌編集部を経てフリーライター。 3年前義母をなくし、お墓がない現実に直面。購入まで苦労したことがきっかけとなり、意外と知らなかったお墓について調べ、著書『間違いだらけのお墓選び』をまとめる。
現在、「明るくわかりやすくお墓を語る」をモットーに、消費者の立場から見た“お墓”についての講演や関連記事の執筆などで活動中。

【 著書 】

『間違いだらけのお墓選び-買ってわかったお墓事情あれこれ』
2005.11刊/情報センター出版局(1400円+税)

〔第1部:お墓購入ドタバタ体験記〕

年齢も趣味も違う家族が一つのものを買うのは大変なこと。
ましてやそれが“お墓”であればモメるのは当然?!著者と家族の笑える(?)お墓探しの日々を綴る。

〔第2部:お墓に関する49の基礎知識〕

誰もがいつかはお世話なるものなのに、よくわからないもの、それがお墓。その購入の実体験をもとに「これだけは知っておきたい」という知識をまとめた。イラストやフローチャート入りで“初心者”にも楽しくわかりやすく、お墓選びのツボを伝える。