繊細な火葬とニッポン

先月、新聞に「四肢(=手足)の火葬」に関する記事が載っていました。
事故や病気で手足など、体の一部を切断した場合、その部分だけを火葬場で火葬することができるそうです。

ただ、そのような方法があることをすべての病院が説明するわけではなく、医療廃棄物用の焼却炉で焼かれてしまい、本人や遺族(その後亡くなった場合)が後から悔やむことがあるといいます。(読売新聞「切断肢の火葬 失った手足 お骨で残せる」2013/02/07夕刊)

四肢の火葬についてはあまり知られていませんが、全国的に取り入れている火葬場は多いようです。記事では、あの世では元の体に戻りたいと考えて、焼いたお骨を、「私が死んだ時、遺骨に混ぜて欲しい」と希望する人の声が紹介されていました。その他、火葬場に詳しい先生に聞くと、「長生きする」と言って切断した足を火葬後に自分で拾骨していく人もいるそうです。

また、この手足だけの火葬は、欧米の火葬場では見られないと教えていただきました。

よく知られているように、例えば、キリスト教では復活思想がありますから、遺体を残すという意味で「土葬」を良しと考えます。国や地域にもよりますが、日本よりは火葬率が低く、また火葬に立会ったり拾骨の習慣はありません。
火葬後の遺骨は、後から取りに来るか、自宅まで配送してもらうか、もしくは火葬場で散骨してもらうなどの方法が取られ、あまりこだわりがない様子がうかがえます。

ところで、日本の火葬場の料金表を見ると、「改葬遺骨」の項目が載っていることがあります。
お墓を違う場所に引越しする際、そこに埋蔵されていた遺体を遺灰にする火葬のことです。
日本でも火葬率が低い時代はありましたし、現在でも土葬の習慣が残っているところがあります。移す先のお墓で土葬を認めていなかったり、納骨堂に納めるような場合、遺体を掘り起こして改めて火葬するわけです。

火葬率ほぼ100%の日本では、そのメニュー(というと不謹慎ですが)も細かく揃っている観があります。体の一部(生前も含む)の火葬。そして一度埋蔵した故人を改めて荼毘(だび)に付する火葬と、骨を最後まで面倒を見るという感じがあります。

日本人の、火葬後の遺骨を拾う=〝拾骨〟についても、諸外国からみると異様な行為と映るようで、あきらかにそこに温度差があります。

〝温度差〟と言えば、日本ではその「拾骨」を行うことが一般的なため、火葬炉には焼くスペースとは別に、焼いた骨をすぐに冷やすためのスペースが設けられています。
また、骨を「拾う」ことができるように、遺骨は完全に灰にすることがないよう火加減が調節されます。

日本の火葬は、私たちの弔い方や死生観に応えるべく構造も技術も進化させてきました。そして、ただ「燃やす」「灰にする」だけではない、他とはひと味違ったスタイルを生み出したようです。

繊細な火葬とニッポン()

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柿ノ木坂ケイ プロフィール

プロフィール

1964年生まれ。東京都立大学人文学部社会学科社会人類学専攻卒。タウン情報誌編集部を経てフリーライター。 3年前義母をなくし、お墓がない現実に直面。購入まで苦労したことがきっかけとなり、意外と知らなかったお墓について調べ、著書『間違いだらけのお墓選び』をまとめる。
現在、「明るくわかりやすくお墓を語る」をモットーに、消費者の立場から見た“お墓”についての講演や関連記事の執筆などで活動中。

【 著書 】

『間違いだらけのお墓選び-買ってわかったお墓事情あれこれ』
2005.11刊/情報センター出版局(1400円+税)

〔第1部:お墓購入ドタバタ体験記〕

年齢も趣味も違う家族が一つのものを買うのは大変なこと。
ましてやそれが“お墓”であればモメるのは当然?!著者と家族の笑える(?)お墓探しの日々を綴る。

〔第2部:お墓に関する49の基礎知識〕

誰もがいつかはお世話なるものなのに、よくわからないもの、それがお墓。その購入の実体験をもとに「これだけは知っておきたい」という知識をまとめた。イラストやフローチャート入りで“初心者”にも楽しくわかりやすく、お墓選びのツボを伝える。