ペットが先か、人間が先か

先月発売された週刊誌『女性セブン』(11/8号)に、女優の名取裕子さんが買い求めたお墓についての記事が掲載されていました。

そのお墓は京都のお寺にあり、家名が刻まれた墓石の下には、今年6月に亡くなった名取さんの愛犬ブブがすでに納骨されているそうです。今後、ご本人も入る予定の、人間とペットが一緒に埋葬されるタイプのお墓です。

名取さんはブブ以外に現在2匹の犬を飼っていて、撮影の多い京都ではホテルに宿泊するのではなく、わざわざペット可のマンションを借りるほどの愛犬家だといいます。

私がお墓を購入した約10年前は、ペットが飼い主と共に入れるお墓はまだ珍しい状況でした。現在は、一部の区画がそのタイプになっている新しい霊園は見かけますし、自分では買わない場合でも、「そんなニーズもあるだろうな」くらいには受け入れられているように思います。

ただ、「動物と人間が同じ場所に埋葬される」場所については、まだ地域差がみられます。

このコラムが掲載されているサイト『いいお墓.com』では、「ペットと一緒に入れる」霊園・墓地は100カ所が紹介されています(2012/11/30時点)。

そのうち東日本が83カ所、西日本が17カ所で、東が8割強と多数を占めています。
また、お寺の境内に設けられている墓地は100カ所中9カ所のみで、全体の1割程度。それ以外は、宗旨宗派を問わない民営霊園にあります。

上記の記事では、『いいお墓.com』を運営する(株)鎌倉新書のコメントとして、「関東の霊園は柔軟な発想をするところが多いものの、伝統的な仏教寺院が多い関西は保守的」であり、ペットとの共葬墓地が少ない事が指摘されています。

仏教では、この世に生を受けたものは6つの世界、地獄・餓鬼・畜生・修羅、人間・天の〝六道〟をめぐり、何度も生と死を繰り返すという、六道輪廻の考え方があります。
このうち人間と天が善趣、それ以外が悪趣と捉えられています。
この六道に当てはめれば犬は〝畜生〟に分類されますから、「人間と共に埋葬するなんてとんでもない」となるわけです。

実際、関東のお寺でも、「住職が、家の墓にペットを納骨することを許してくれなかった」という話を聞いたことがあります。
関西では、こうした仏教の教えがより重視される傾向にあるようです。

ところで、名取さんのお墓について注目したのは、それがペットとの共葬タイプだからというより、まず亡くなった愛犬のためにと用意した場所に、後から人間が入るという点です。

今まで「ペット共葬墓」というと、とりあえずは人間のためのお墓にペットも入るスペースがある、人間主体のお墓というイメージがありました。
けれど、「ペットも家族の一員」と考える人にとっては、むしろ死の順番などは関係なく、亡くなった〝身内〟=ペットのためにお墓を買い求める。そこに自分も入ることが自然なのです。

これから先、仏教の考え方は関係なく、名取さんのような方法を選ぶ方は増えていくのかもしれません。

ペットが先か、人間が先か()

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柿ノ木坂ケイ プロフィール

プロフィール

1964年生まれ。東京都立大学人文学部社会学科社会人類学専攻卒。タウン情報誌編集部を経てフリーライター。 3年前義母をなくし、お墓がない現実に直面。購入まで苦労したことがきっかけとなり、意外と知らなかったお墓について調べ、著書『間違いだらけのお墓選び』をまとめる。
現在、「明るくわかりやすくお墓を語る」をモットーに、消費者の立場から見た“お墓”についての講演や関連記事の執筆などで活動中。

【 著書 】

『間違いだらけのお墓選び-買ってわかったお墓事情あれこれ』
2005.11刊/情報センター出版局(1400円+税)

〔第1部:お墓購入ドタバタ体験記〕

年齢も趣味も違う家族が一つのものを買うのは大変なこと。
ましてやそれが“お墓”であればモメるのは当然?!著者と家族の笑える(?)お墓探しの日々を綴る。

〔第2部:お墓に関する49の基礎知識〕

誰もがいつかはお世話なるものなのに、よくわからないもの、それがお墓。その購入の実体験をもとに「これだけは知っておきたい」という知識をまとめた。イラストやフローチャート入りで“初心者”にも楽しくわかりやすく、お墓選びのツボを伝える。