「お墓の手づくり」という魅力

先月ご紹介しました、全国優良石材店の会(全優石)が実施した「2012年お墓購入者アンケート調査」によると、形の比率は「伝統的な和型 41.2%」「シンプルな洋型 40.9%」「デザインのお墓12%」でした。

この調査を始めた2004年には、デザイン墓の割合は6.1%でした。また、2007年に12%を超えましたが、その後は足踏み状態となっています。(2008年10.4%、2009年12.3%、2010年12.8%、2011年12.6%)

デザイン墓の数が伸び悩んでいる要因としては、一般的に規格品より金額が高くなることや、デザイン墓を手掛ける墓石店が限られることが考えられます。

ところで、「デザイン墓」というと、故人の趣味を反映してゴルフボールやギターなどを石で形作ったり、その造形にオリジナルな趣向を取り入れたおしゃれなお墓が思い浮かびます。

そんな中、〝土饅頭型〟というのは、かえって新鮮で、この人らしさを感じます。

土饅頭型のお墓を建てたのは作家の赤瀬川原平氏です。ご両親のお墓がお参りしにくい場所にあったことから、縁あって小林秀雄、鈴木大拙も眠る鎌倉市東慶寺の境内墓地に新たに建立することに(この辺のいきさつは、赤瀬川原平著『「墓活」論』PHP研究所をご参照のほど)。

土饅頭型といっても土葬ではありませんから、小さく〝饅頭〟のように丸く土を盛ったお墓のようです。
設計は、友人でもある建築家の藤森照信氏に依頼。
石で形をつくり、その上に土を固め、家名を彫った自然石を手前に。お墓のてっぺんには盆栽用の小さな松を植えたそうです。

その形状以上に注目したいのは、それを造る過程に、施主(赤瀬川氏と兄)が実際に関わっているということです。

赤瀬川氏は、藤森氏に連れられて石切場に出掛けます。お墓の補強に使う鉄平石を自分で選ぶためでした。
施工においても、地下(納骨室)の工事は石材店に任せたものの、地上の土饅頭は、藤森氏と赤瀬川兄弟が手掛けました。

鉄平石を積み上げ土饅頭の形をつくる。土をその隙間に入れて固める。表面にコケを張る。そのすべての工程を自分たちで行ったといいますから、まさにお墓版DIY(「do it yourself」=自分でつくる)です。

その作業自体何やら楽しそうですし、両親の遺骨を納める、またいずれ自分たちも入るであろう場を自らの手で造りあげることは特別で、意味のあることのように感じます。

ですが、今どき、お墓を造るのはその多くが墓石店で、赤瀬川氏のように一部関わることすら珍しいと言えます。

冒頭で触れたように、規格品ではないお墓を建てる人は、ここ数年、頭打ち状態です。
赤瀬川氏の例に学ぶとするならば、そんな状況を打破するのは、お墓づくりに自ら参加するというプラスアルファの喜びが加わることなのかもしれません
それは、「自分たちらしい」ものが、はっきりとこの世にただ一つ「自分たちだけ」のものへと転じる瞬間でもあります。

「お墓の手づくり」という魅力()

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柿ノ木坂ケイ プロフィール

プロフィール

1964年生まれ。東京都立大学人文学部社会学科社会人類学専攻卒。タウン情報誌編集部を経てフリーライター。 3年前義母をなくし、お墓がない現実に直面。購入まで苦労したことがきっかけとなり、意外と知らなかったお墓について調べ、著書『間違いだらけのお墓選び』をまとめる。
現在、「明るくわかりやすくお墓を語る」をモットーに、消費者の立場から見た“お墓”についての講演や関連記事の執筆などで活動中。

【 著書 】

『間違いだらけのお墓選び-買ってわかったお墓事情あれこれ』
2005.11刊/情報センター出版局(1400円+税)

〔第1部:お墓購入ドタバタ体験記〕

年齢も趣味も違う家族が一つのものを買うのは大変なこと。
ましてやそれが“お墓”であればモメるのは当然?!著者と家族の笑える(?)お墓探しの日々を綴る。

〔第2部:お墓に関する49の基礎知識〕

誰もがいつかはお世話なるものなのに、よくわからないもの、それがお墓。その購入の実体験をもとに「これだけは知っておきたい」という知識をまとめた。イラストやフローチャート入りで“初心者”にも楽しくわかりやすく、お墓選びのツボを伝える。