法律改正で、地域のお墓はどうなる?!

新入生、新入社員が入ってきたりと、身の回りに何かと変化がみられる年度替りの時期です。

お墓に関する法律『墓地、埋葬等に関する法律』(墓埋法)は、4月1日からその一部が変わります。

これまで墓地・納骨堂や火葬場の経営許可を出していたのは都道府県知事(および指定都市、中核市の長)でしたが、この権限がすべての市(および特別区)へ委譲されるのです。
例えば、新しい墓地の開設申請窓口が東京都ではなく、中野区や国立市になるわけです。

内閣府が施策の一つとして挙げる〝地域主権改革〟により、昨年8月、『地域に自主性及び自立性を高めるための改革の推進を図るための関係法律の整備に関する法律』(長い!)が成立しました。墓埋法もこの法律を受けて改正されることとなりました。

今回の改正で個人的に一番期待しているのは、より地域の風習や人々の意識に根ざした墓地や火葬場が出現することです。
もちろん法律上適した施設であることは原則になると思いますが、墓地や火葬場というのはそれだけでは完成しない場所だと思うのです。

戦前、日本初の公園墓地「多磨霊園」を計画したことで知られる、東京市の公園課長だった井下清氏は、その後、瑞江葬儀所(東京都・昭和12年竣工)の設立に携わりました。参考にしたのはヨーロッパ視察で見た施設でした。
広い敷地に緑地をつくるなど、周囲との調和も視野に入れて環境を整備したところまでは良かったのですが、問題は「火葬前、柩に付き添い炉前に行けるのは3名まで」としたことです。

ヨーロッパでは一般的に、教会で告別式をした後、火葬に立会う遺族はほとんどみられません。
一方、日本では今だに「炉に入る前の亡骸に泣きながらすがりつく」光景を目にするぐらい、そこは、故人との大切なお別れの場として考えられています。
そんな日本人の感覚を考慮せず、効率を優先させた条件を設定しました。

ただ、現在では、炉前立ち会いを「3~5名を目安に協力をお願いする」としている瑞江葬儀所はまだいい方といえるかもしれません。

「混雑を避けるため」「作業の妨げになるから」という理由から、まったく炉前に遺族や会葬者を入れない火葬場もあります。他の会葬者の迷惑になるからと、読経や賛美歌を制限する施設もあります。

火葬場は、ただ単に亡くなった人を火葬することだけが目的の場所でしょうか。墓地は亡くなった人を埋蔵・埋葬するだけの場所でしょうか?

今後、権限を委譲される各自治体には、その計画の良し悪しを見分ける力が求められます。

墓地・火葬場の許認可の権限が都から区や市へ、県から市へと移ることは、決して全国一律ではない、弔いや供養の風習を細やかに反映できるチャンスでもあります。

そこを利用する多くの人がベストだと思う方法で、心おきなく死者を弔うことができる。そんな場所が増えたなら―。
希望を込めて、そんな展開を願っています。

※注:「火葬場」に関しては、以前から、各都道府県により経営許可の権限を市町村に委譲するケースが増えています

法律改正で、地域のお墓はどうなる?!()

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柿ノ木坂ケイ プロフィール

プロフィール

1964年生まれ。東京都立大学人文学部社会学科社会人類学専攻卒。タウン情報誌編集部を経てフリーライター。 3年前義母をなくし、お墓がない現実に直面。購入まで苦労したことがきっかけとなり、意外と知らなかったお墓について調べ、著書『間違いだらけのお墓選び』をまとめる。
現在、「明るくわかりやすくお墓を語る」をモットーに、消費者の立場から見た“お墓”についての講演や関連記事の執筆などで活動中。

【 著書 】

『間違いだらけのお墓選び-買ってわかったお墓事情あれこれ』
2005.11刊/情報センター出版局(1400円+税)

〔第1部:お墓購入ドタバタ体験記〕

年齢も趣味も違う家族が一つのものを買うのは大変なこと。
ましてやそれが“お墓”であればモメるのは当然?!著者と家族の笑える(?)お墓探しの日々を綴る。

〔第2部:お墓に関する49の基礎知識〕

誰もがいつかはお世話なるものなのに、よくわからないもの、それがお墓。その購入の実体験をもとに「これだけは知っておきたい」という知識をまとめた。イラストやフローチャート入りで“初心者”にも楽しくわかりやすく、お墓選びのツボを伝える。