〝春節〟で、日本のお墓がピンチ?

〝春節〟といえば、旧暦で祝う中国のお正月。
中国や台湾、香港などでは大型連休となるため、帰省したり海外に出掛ける人が多いといいます。日本にも、震災後減少していた中国人観光客が1月末の休みに随分戻ってきたことが報じられました。

その恩恵を受けて大手デパートなどは売り上げを伸ばしたわけですが、一方、この「春節」が日本のお墓に与える影響はといえば、決していい方向とは言えないのです。

日本と中国。隣国でもあり、経済面でも深い関係にある両国ですが、「お墓」においても同じことが言えます。

このほど、財務省が2011年度の石材輸出入通関実績を発表しました。

それによると、石材輸入数量の1位は中国で93万6491トンでした。
2位のインドと3位のブラジルが1万5千トン台、4位以下は1万トン以下ですから、日本の石材輸入国は中国がダントツトップの位置を占めています。

なおこの数字には、原石と製品、また建築用も含まれていますが、日本のお墓は原石だけではなくて、その加工においても中国なしに成り立ちません。
墓石店は、製品化された石塔や外柵を仕入れて販売するところが増えています。

例えば、全国の小売石材店250社(従業員5人以下の企業86%)を対象にした昨年のアンケートによると、石塔に関して「自分の店で加工をしているか?」の質問に「殆ど製品を仕入れている」という答えが48.8%と約半数だったのに対し、「50%以上自社加工している」は6%に過ぎません。
(『石材業界動向調査アンケート結果2011年』日本石材工業新聞)

「中国製品」と聞くと、安かろう悪かろうのイメージがあるかもしれませんが、墓石に関しては、それなりの年月を経て職人も育っているため一定のレベルに達していると言われています。
ただし、今後はそれなりの努力が必要なのかもしれません。

それというのも、中国の工場では人手不足が大きな問題となってからです。

近年の経済発展に伴い、人件費が上昇した中国では、かつてのように安い賃金で人が集まる状況ではなくなり、職人不足から閉鎖したり倒産する工場も出ています。

また事務仕事などに比べると体力が必要で、時には危険も伴う石材加工が敬遠される向きもあるといいます。
もう一つ、職人離れの原因として、これまで石材加工の給与は歩合制だったことが挙げられます。仕事量に応じて収入が変化する、つまり安定した仕事とはいえない面があるのです。

そんな中、経営者の心配の種といえば〝春節〟です。―この時期を境に、職人が激減することが数年来続いているからです。
出稼ぎ職人が旧正月に1週間ほど実家に帰った後、仕事場に戻ってこないというケースが増えているのです。

かつては内陸部の農村からの出稼ぎ労働者が多数いたものの、今は地元でも仕事が探せるようになりました。
春節後に職人が半数となり、日本への製品納入が滞ってしまう事例も出てきています。

ただ、そのためにお墓の完成が遅れることは、今のところそれほど深刻な事態ではありません。
問題は、少なくない人数の職人の離脱が、墓石製品のレベル低下に直結するということです。

人手を確保するために新たに人を雇っても、すぐに技術は身につきません。ゼロから積み上げるケースが増えるほど、これまで安定していた品質を保つことが難しくなります。

解決策として、生活レベルの向上に合わせた待遇を用意するのか。それとも他の産業と同じく、安い人件費を求めて他のアジア諸国に工場を移し、一から築き上げていくのか。

春節後の今、職人が確保できているかということと共に、今後の行方が気になるところです。

〝春節〟で、日本のお墓がピンチ?()

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柿ノ木坂ケイ プロフィール

プロフィール

1964年生まれ。東京都立大学人文学部社会学科社会人類学専攻卒。タウン情報誌編集部を経てフリーライター。 3年前義母をなくし、お墓がない現実に直面。購入まで苦労したことがきっかけとなり、意外と知らなかったお墓について調べ、著書『間違いだらけのお墓選び』をまとめる。
現在、「明るくわかりやすくお墓を語る」をモットーに、消費者の立場から見た“お墓”についての講演や関連記事の執筆などで活動中。

【 著書 】

『間違いだらけのお墓選び-買ってわかったお墓事情あれこれ』
2005.11刊/情報センター出版局(1400円+税)

〔第1部:お墓購入ドタバタ体験記〕

年齢も趣味も違う家族が一つのものを買うのは大変なこと。
ましてやそれが“お墓”であればモメるのは当然?!著者と家族の笑える(?)お墓探しの日々を綴る。

〔第2部:お墓に関する49の基礎知識〕

誰もがいつかはお世話なるものなのに、よくわからないもの、それがお墓。その購入の実体験をもとに「これだけは知っておきたい」という知識をまとめた。イラストやフローチャート入りで“初心者”にも楽しくわかりやすく、お墓選びのツボを伝える。