スティーブ・ジョブズ氏を追悼する4000枚の付箋

先月5日、米アップル社の創業者の一人、スティーブ・ジョブズ氏が亡くなりました。

「iMac」「iPod」「iPhone」を生み出したカリスマ経営者として知られるジョブズ氏。ただ本当に賞賛されるのは、それらの商品がヒットしたばかりでなく、私たちとコンピューターの関係を、ライフスタイル自体を変化させる革新的なものだったからです。

アップル社は10月19日、社員向けのお別れ会を本社で行いました。
米国内のアップルストアで、一般の人のジョブズ氏へのメッセージが書かれたカラフルな付箋が貼られている様子も報道されました。

一端に粘着材が付いている細長い紙、四角い紙。本を読みながら大事なページに。例えば、「やるべきこと」をメモ書きして、ペタペタとパソコン周りに貼り付ける事務用品。

そんな〝付箋〟が、今度はベルリン(独)のアップルの店舗にお目見えしました。

店頭の透明な窓ガラスに黄色、緑、青の付箋が、訪れた人の手によって次々と貼られていきます。現われたのは、高さ4m近くある巨大なジョブズ氏の肖像でした。
その模様が動画サイトに投稿されました。

延べ200人が下絵に沿って貼った付箋は4000枚。完成までに6時間あまりかかったこの「肖像画」は、5日間店舗に飾られたそうです。

1枚1枚の付箋はジョブズ氏の死を悼む人々の気持ちです。
日本でいえば、お葬式であげる線香、あるいは故人に捧げる花のようなもの。

ところで、日本では、キリスト教葬だけではなく、無宗教葬でも献花が一般的に組み込まれるようになりました。
お葬式での〝献花〟は、わが国独自のやり方です。

欧米では、式ではなく埋葬時に花を手向けます。
日本での献花は、仏教のお葬式の焼香に代る方法として取り入れられたといわれています。

宗教性がなく、やり方フリーの無宗教葬でも献花が定着してきたのは、その行為が私たちの心情にしっくりくるからではないでしょうか。

線香という宗教性を感じさせるアイテムを排除し花に置き換えても、「一人一人が弔意を表すため一本ずつ捧げる」行為は残ったわけです。

そして今回、ベルリンのMacユーザー、ジョブズ氏のファンが選んだ〝付箋〟は何とも軽やかでした。

この動画を投稿した、映像作家のアンドレアス・ライナーさんは、インタビューにこう答えています。
「多くの人がスティーブの死を悲しんだので、このような形で彼をたたえたいと思いました。動画を見た人も、同じように追悼の意を広げて欲しいと思います」(NHK『特ダネ投稿DO画』)

ジョブズ氏が携わってきたPC関連の身近なものを使い、故人の姿を描く。
それはこれまで氏が世に送り出してきた数々の製品のように、どこか楽しげで独創的な弔いの表現でした。

スティーブ・ジョブズ氏を追悼する4000枚の付箋()

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柿ノ木坂ケイ プロフィール

プロフィール

1964年生まれ。東京都立大学人文学部社会学科社会人類学専攻卒。タウン情報誌編集部を経てフリーライター。 3年前義母をなくし、お墓がない現実に直面。購入まで苦労したことがきっかけとなり、意外と知らなかったお墓について調べ、著書『間違いだらけのお墓選び』をまとめる。
現在、「明るくわかりやすくお墓を語る」をモットーに、消費者の立場から見た“お墓”についての講演や関連記事の執筆などで活動中。

【 著書 】

『間違いだらけのお墓選び-買ってわかったお墓事情あれこれ』
2005.11刊/情報センター出版局(1400円+税)

〔第1部:お墓購入ドタバタ体験記〕

年齢も趣味も違う家族が一つのものを買うのは大変なこと。
ましてやそれが“お墓”であればモメるのは当然?!著者と家族の笑える(?)お墓探しの日々を綴る。

〔第2部:お墓に関する49の基礎知識〕

誰もがいつかはお世話なるものなのに、よくわからないもの、それがお墓。その購入の実体験をもとに「これだけは知っておきたい」という知識をまとめた。イラストやフローチャート入りで“初心者”にも楽しくわかりやすく、お墓選びのツボを伝える。