無関心な子どもたち

今年7月末東京都足立区の、戸籍上では111才の男性が自宅で白骨化した状態になっているのが発見された。

この事件がきっかけとなり、不明高齢者が次々に発覚。その後の法務省の調査で、戸籍はあっても住所がわからない100才以上が、全国で23万人以上いることが発表された。

そのうち〝120才以上〟は8万人近くに上る。徳川時代の文化7年生まれ〝200才〟や、ペリーが来航した1853年生まれの〝157才〟の生存は、明らかに手続きミスとみられる。
これらはともかく問題は「本人の失踪」とされるケースだ。

日本の法律では、ヒトの死がわかった日から7日以内に死亡診断書などを添付した「死亡届」を役所に出すことが決められている。
それが受理されると「火葬許可証」が発行される。火葬を終えるとそれに押印された書類を受取り、埋蔵時に墓地の管理者に提出-。
死んでからも書類が伴うというシステムになっていて、「死亡届」が受け付けられていなければ、お墓にも入っていない、はず。

〝消えた100才〟は、年間千人を越すといわれる「行旅死亡人」、身元がわからない死者として扱われている可能性も考えられる。

2006年の内閣府の調査では、高齢者が別居してる子供と実際に会うか、電話での連絡頻度が「週に1回以上」はアメリカで約8割、韓国・ドイツ・フランスで6~7割なのに対し、日本では5割以下だった。
残りの半数以上が「月に1、2回以下」「年に数回」「ほとんどない」に含まれている。

独立志向の強い欧米より日本の方が、子供と接触する機会が少ないことは意外だった。

一方、親と子が「同居していればすべて良し」ということでもないらしい。
2009年の統計では、70代80代の自殺者のうち「同居人あり」が70%以上を占めている。

元監察医の立場からの著書が知られる上野正彦氏は、その実情をこう指摘している。
「老人の自殺の動機は家庭問題にあり、これが7,8割方を占めているのは間違いない。これが監察医として30年間、老人の自殺に立会って得た私の印象である。」(『自殺死体の叫び』)

また、上野氏が実際に昭和51~53年の自殺した高齢者を調べたところ、「3世帯同居」の人が全体の60%強を占めていたという。
かつて見られた〝ちびまる子ちゃん一家〟の家族構成が増えたとしても、それがベストとは限らないようだ。

一連の発端となった111才の男性の遺体は、子供や孫が住む自宅1階の部屋で発見された。亡くなったと推定される時期から約30年間、部屋のドアが開かれることはなかった。
そこで自分の親が死んでいるかもしれないというのに。

この出来事が報道された当初は、特殊な事例だと思っていた。
子どもと同居していれば、ここまでの事件は起きないだろうと。
ところがその後相次いで判明する不明高齢者の家族が口にするのは、「何十年も連絡を取っていない」「安否はわからない」だった。

そう証言したのは、主に住民登録上の「同居者」、当人の息子や娘たち。実の親の住んでいるところも、生死もわからないというのだ。

どうしてそこまで無関心?そもそも、いつからこんなことが?
混乱の中、「家族関係の崩壊」というこの国の実態だけが、私たちに突きつけられた。

無関心な子どもたち()

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柿ノ木坂ケイ プロフィール

プロフィール

1964年生まれ。東京都立大学人文学部社会学科社会人類学専攻卒。タウン情報誌編集部を経てフリーライター。 3年前義母をなくし、お墓がない現実に直面。購入まで苦労したことがきっかけとなり、意外と知らなかったお墓について調べ、著書『間違いだらけのお墓選び』をまとめる。
現在、「明るくわかりやすくお墓を語る」をモットーに、消費者の立場から見た“お墓”についての講演や関連記事の執筆などで活動中。

【 著書 】

『間違いだらけのお墓選び-買ってわかったお墓事情あれこれ』
2005.11刊/情報センター出版局(1400円+税)

〔第1部:お墓購入ドタバタ体験記〕

年齢も趣味も違う家族が一つのものを買うのは大変なこと。
ましてやそれが“お墓”であればモメるのは当然?!著者と家族の笑える(?)お墓探しの日々を綴る。

〔第2部:お墓に関する49の基礎知識〕

誰もがいつかはお世話なるものなのに、よくわからないもの、それがお墓。その購入の実体験をもとに「これだけは知っておきたい」という知識をまとめた。イラストやフローチャート入りで“初心者”にも楽しくわかりやすく、お墓選びのツボを伝える。