お墓でヌード撮影会?!

東京都の青山霊園で女性モデルのヌード撮影をした写真家の篠山紀信氏に対し、東京簡裁が罰金30万円の略式命令を出していたことが先月9日に報道された。

篠山氏は08年8~10月にかけて、ヌード写真集『20×× TOKYO』制作のため、結婚式場、百貨店前など12カ所で撮影を行った。その中でも青山霊園のケースが悪質として、検察が立件。氏は、公然わいせつ罪と礼拝所不敬の罪で略式起訴されていた。

青山霊園といえば、都会のど真ん中にありながら、敷地面積約26万m²を持つ墓地。平成21年度募集の一般墓地の使用料を見ると、3.4m²の区画が一千万円を超えるなど、場所柄、お値段もそれなりになる。

桜の名所でもある青山霊園には、昼間2回ほど行ったことがある。
木々が覆い茂る中、新しく建てられたお墓もありながら、歴史を感じる墓石が立ち並ぶそこは、東京の、というか日本のファッションの最先端の街の中で違う空気をかもし出していた。
夜になれば、周辺の華やかさに比してますます異空間として際立つであろうその場所と、女性の裸。

シロウト考えながら、写真家として創作意欲がわくのはわからなくない。

篠山氏は、ライフワークとしている東京をテーマにしたヌード写真集の意図について、自身の公式HPでこう記している。
「普段見慣れた光景の中に有り得べからざる異物を置くことにより目から鱗を剥がし、TOKYOが持つ不思議なエネルギーの本質を露呈させようと考えた」
(「『20×× TOKYO』公然わいせつ事件について」:篠山紀信公式サイトより)

しかし、今回問われたのは、作品自体のわいせつ性ではなく、撮影行為の方だった。
同じく、氏の事件についてコメントによると、警察の見解は「『100%見られないように出来ない裸はこの罪にあたる』の一点張りだった」。

公道や墓地。不特定の人の視界を遮ることのないヌード撮影が、問題とされたのだった。

そして、氏が罰金を科せられたもう一つの方、「礼拝所不敬の罪」。
「公然わいせつ罪」はともかく、こちらは聞き慣れない人も多いと思う。

礼拝所不敬罪は刑法188条に規定されている。墓所や神祠、仏堂などの場所で公然と不敬な行為をした者に対し、6ヶ月以下の懲役か禁固、または10万円以下の罰金が処せられる。
過去には、故意に墓石を倒したり、広島市の原爆慰霊碑の献花をまき散らした男がこの罪を犯した容疑で逮捕されている。
礼拝や信仰の場での良俗や、人々の宗教感情を害する行為が対象となる。

今回、篠山氏の撮影に対し、お墓の所有者から霊園に抗議があったという。
「ご先祖や家族が眠る場所でなんてことを」という気持ちはうなずけるし、尊重されるべきだと思う。

ところで、このような状況が実際、我が身に降りかかったら、人はどのように考えるのだろう。
「もし自分たちのお墓でヌード撮影されたら?」と、数人に尋ねてみた。
「写真家が罪に問われるのは当然」と答えた人がいる一方、「撮影に招待してくれるならいいかな」という予想外の回答も。

公開ヌード撮影会in墓地?そんな不謹慎なことを考える人はごく少数だと思うけれど、「公然わいせつ罪」の方はともかく、お墓の持ち主と墓地の管理者の許可を取れば、「礼拝所不敬罪」は免れただろうか?
そんな考えが一瞬頭をよぎったけど、すぐに打ち消された。
青山霊園=公営(都立)。管理の最高責任者は東京都の長である都知事、石原慎太郎氏。撮影のお許しはかなり難しいのではないかと思う。

お墓でヌード撮影会?!()

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柿ノ木坂ケイ プロフィール

プロフィール

1964年生まれ。東京都立大学人文学部社会学科社会人類学専攻卒。タウン情報誌編集部を経てフリーライター。 3年前義母をなくし、お墓がない現実に直面。購入まで苦労したことがきっかけとなり、意外と知らなかったお墓について調べ、著書『間違いだらけのお墓選び』をまとめる。
現在、「明るくわかりやすくお墓を語る」をモットーに、消費者の立場から見た“お墓”についての講演や関連記事の執筆などで活動中。

【 著書 】

『間違いだらけのお墓選び-買ってわかったお墓事情あれこれ』
2005.11刊/情報センター出版局(1400円+税)

〔第1部:お墓購入ドタバタ体験記〕

年齢も趣味も違う家族が一つのものを買うのは大変なこと。
ましてやそれが“お墓”であればモメるのは当然?!著者と家族の笑える(?)お墓探しの日々を綴る。

〔第2部:お墓に関する49の基礎知識〕

誰もがいつかはお世話なるものなのに、よくわからないもの、それがお墓。その購入の実体験をもとに「これだけは知っておきたい」という知識をまとめた。イラストやフローチャート入りで“初心者”にも楽しくわかりやすく、お墓選びのツボを伝える。