成仏できないペットたち

日本で飼われている犬猫の数、2234万頭。イヌの飼育世帯率は18.3%(ペットフード協会調査09年度)。約2割の世帯にワンちゃんがいることになる。
買い物に行けば、スーパーの前では、必ずと言っていいほど飼い主を待つイヌを見かけるわけだ。

そんな、ペットを持つ人々を震撼させる事件が、今年4月報道された。
埼玉県飯能市の正丸峠付近で、多数のペットの死骸が投棄されていることが発覚。犯人は、ペットの火葬を請け負う男(71歳・元町議)だった。

依頼主には「火葬して骨を返す」と言いながら、実際は火葬炉を持っておらず、10年前から200匹以上(!)の死骸を捨ててきたと推定されるという。
動機は「利益を上げるため」という、単純で心ないものだった。

ペットの最期を手助けするペット葬祭業者は、ニーズと共に増加しており、ある雑誌社の調べでは800社以上が営業しているとか。
業界では団体や協会を作り、自主的に運営基準を決めたり、資格制度を設けるなど、信頼向上に努める動きがみられる。
これほどひどい業者は少数派と思いたい。

ところで今、日本では年間約28万頭の犬猫が殺処分されているという。自治体の保健所や動物愛護センターに、「もう不要」と持ち込むのはペットショップや業者ばかりでなく、実は飼い主が多いのだとか。
引越し、不況…。それぞれ事情はあると思うけれど、一般の人が「飼いきれない」と、その処分をゆだねることがあるというのが実情のようだ。

ペット遺棄事件をテーマにしたラジオ番組で、気になる話を耳にした。

ペットに関するトラブル相談を受けている動物法務協議会代表の伊藤浩氏は、「飼い主が生き物を飼うという意識が薄い」ことを感じているそうだ。
「買った犬がこんなに臭くなるとは、ペットショップから聞いてなかった」と文句を言う人。運動を好む犬を、室内で飼ってしまう人。
安易に飼って結局は、そんな理由から安易に捨ててしまう傾向があるとか。

一方、「ペット先進国」と言われるドイツでは、殺処分数ゼロ。保護施設に入った動物は、引取り手がなくても一生そこで面倒を見てもらえる。
また、ペットを飼う際、例えば屋外であれば、「犬が動ける幅は最低でも5m以上なければいけない」というように細かな規則が決められている。

「最低でも5m以上の幅」は日本ではかなり難しいことかもしれない。
それぞれの国の住環境の違いはあったとしても、そこには、ペットにも快適に生きる権利を認める人々の姿勢が見えてくる。

「犬はモノではない」。ドイツの民法には、そんな一文が入っているそうだ。

埼玉県警に逮捕されたペット葬祭業の男は、「廃棄物処理法違反」で起訴された。
犬や猫の死体が“廃棄物”とされることに、引っかかりを覚える人は多いと思う。
法律上とはいえ、そんな扱いが考えられない、ペットを大事にする人がいる一方で、簡単にその飼育を放棄してしまう飼い主も存在する。生きているうちから、まるでゴミでもあるかのように。

ウンチもすれば目ヤニもつける。餌を与えなくてはいない、運動させなければいけない。生きているからこそ、のことを想定していなかったと言って最後まで責任を持たない。そんな人にとって、ペットは“モノ”なのだろうか。

今回の事件を受け、環境省はペット葬祭業者の登録制を検討している。
法律で悪質業者を規制することはできても、健全な意味でのペットとの共生社会へと人間の意識を変えるのは、簡単なことではないのかもしれない。

参考番組

  •     TBSラジオ「ニュース探求ラジオDig」『ペットの葬祭業ってどうなってるの?』
      2010.04.14放送
  •     NHK BS-1「地球アゴラ」『イヌは友だち・世界のペット犬事情』 2009.11.01放送

成仏できないペットたち()

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柿ノ木坂ケイ プロフィール

プロフィール

1964年生まれ。東京都立大学人文学部社会学科社会人類学専攻卒。タウン情報誌編集部を経てフリーライター。 3年前義母をなくし、お墓がない現実に直面。購入まで苦労したことがきっかけとなり、意外と知らなかったお墓について調べ、著書『間違いだらけのお墓選び』をまとめる。
現在、「明るくわかりやすくお墓を語る」をモットーに、消費者の立場から見た“お墓”についての講演や関連記事の執筆などで活動中。

【 著書 】

『間違いだらけのお墓選び-買ってわかったお墓事情あれこれ』
2005.11刊/情報センター出版局(1400円+税)

〔第1部:お墓購入ドタバタ体験記〕

年齢も趣味も違う家族が一つのものを買うのは大変なこと。
ましてやそれが“お墓”であればモメるのは当然?!著者と家族の笑える(?)お墓探しの日々を綴る。

〔第2部:お墓に関する49の基礎知識〕

誰もがいつかはお世話なるものなのに、よくわからないもの、それがお墓。その購入の実体験をもとに「これだけは知っておきたい」という知識をまとめた。イラストやフローチャート入りで“初心者”にも楽しくわかりやすく、お墓選びのツボを伝える。