古代エジプト人と日本人が共感できること?

どちらかというと今起こっていることに興味があるのか、“古代”とか“遺跡”にはピンと来ない方だ。そんなわけで吉村作治先生監修のエジプト展と聞いても傍観者だったけれど、「お墓」には関係がありそうなので未知の世界を覗いてみることにした。

先月、古代オリエント博物館に足を運んだのは平日の夕方。閉館1時間前だったせいか、ほどほどの混み具合だった。
詳しい解説を聞くことができるヘッドフォンを付けた何人かの女性が、熱心に見て回っている。

入口近くには、「墓地の神」「冥界の支配者」の像。その前に立ってみたけれど、大きく見開かれた眼はどこか遠くを見ている感じがして、人間を受け入れてくれるような雰囲気がない。
仏像でよくみられる“半眼”に慣れているせいだろうか。

「ミイラの作り方」のコーナーがあった。
古代エジプト人は、この世での生を終えても、あの世で再び永遠の生を得られると信じていた。そのためには、死んだ後、魂がいつでも戻ってこられる肉体の保存が必要と考えていたらしい。

そして職人によるミイラ作りには、値段によって松竹梅があったとか(!)。
最上級のコースの場合、まず内蔵を抜き取る。鼻から脳をかき出し、わき腹から内蔵を取り出す。そのための金属製の器具は意外に細く短く、普通の耳かきの長さもないものだった。
手順としては、その後大量のナトロン(塩の結晶)をまぶして水抜きをし、乾燥させるそうだ。

そんな説明の映像を見ていると、なにやら背中に圧迫感が…。
振り返ると、そこには横1m高さ2m以上はあると思われる、変色したテーブルのようなものが立ちはだかっていた。プレートには「作業・木製台」の文字が。
死体をミイラにした作業台!この上で死んだ人の内臓を取ったりしていた、ということは、あちこちどす黒く見えるシミは体液か、血液? なんだかリアリティがありすぎる展示物だった。

早々にそこを立ち去り、今回初公開という、吉村調査隊が発掘した夫婦の棺のところへ。2つの木棺は、同じ埋葬場所の南北の部屋からそれぞれ出土したという。

ところで日本では、「あの世離婚」という言葉があるように、夫婦であっても、別々のお墓に入ることを希望する人(特に女性)がいる。
この世では我慢したけれど、死んでまで一緒はイヤという意思表示のようだ。

一方、古代エジプトでは、生前に夫婦であった男女は死後も同じく夫婦であると考えられていたとか。「来世でも」ということがイヤならば、生きている間に離婚するそうだ。
そんなふうに人間関係をあいまいにしないところは、日本人との差かもしれない。

「違い」もいいけれど、日本との共通点はないのだろうか?

さらに見て回ると、エジプトでは、「故人の墓への供物を欠かしてはならなかった」との解説があった。これはある程度共通するかもしれない。
あの世でも、この世と同じように生活すると考えていたため、遺族は死者が困らないようにお墓の壁にも酒や食べ物の絵を入れたそうだ。

また、墓参りの時には、故人に自分の悩みを打ち明けることがあったそうだ。するとその晩見た夢に回答が示される。その内容を、夢相の人に解読してもらうのだとか。
夢占いの部分は日本では一般的ではないけれど、「墓前で相談」は共有できそうな感覚だ。

そんな発見もあり、そろそろ展示会を後にすることにした。

出口のところでふと、小型のピラミッド模型に目を奪われた。調査への寄付を募る、透明な素材でできたそのボックスの中に、折り重なるお札の山が見えた。
先生のファンだったり、エジプト文明好きな人が少なくないことを改めて実感させられたのだった。

古代エジプト人と日本人が共感できること?()

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柿ノ木坂ケイ プロフィール

プロフィール

1964年生まれ。東京都立大学人文学部社会学科社会人類学専攻卒。タウン情報誌編集部を経てフリーライター。 3年前義母をなくし、お墓がない現実に直面。購入まで苦労したことがきっかけとなり、意外と知らなかったお墓について調べ、著書『間違いだらけのお墓選び』をまとめる。
現在、「明るくわかりやすくお墓を語る」をモットーに、消費者の立場から見た“お墓”についての講演や関連記事の執筆などで活動中。

【 著書 】

『間違いだらけのお墓選び-買ってわかったお墓事情あれこれ』
2005.11刊/情報センター出版局(1400円+税)

〔第1部:お墓購入ドタバタ体験記〕

年齢も趣味も違う家族が一つのものを買うのは大変なこと。
ましてやそれが“お墓”であればモメるのは当然?!著者と家族の笑える(?)お墓探しの日々を綴る。

〔第2部:お墓に関する49の基礎知識〕

誰もがいつかはお世話なるものなのに、よくわからないもの、それがお墓。その購入の実体験をもとに「これだけは知っておきたい」という知識をまとめた。イラストやフローチャート入りで“初心者”にも楽しくわかりやすく、お墓選びのツボを伝える。