前向きな遺書?『死ぬ前に書くための大切な10のリスト』

葬儀業界で働く人にお話を聞くと、「人間はいつ死ぬかわからない」ことが普通に頭にあるという方は多いようだ。

もちろんこの業界にいなくともそんな考えを持っている人はいるだろうけれど、日々死に接している人の実感には及ばないのではないかと思う。
例えば、健康な30代40代が「明日死ぬかもしれない」と遺書を書いておくケースは少ないのではないか。

そんな折、友人から「『遺書』の一種だと思うけどそれらしくなくて面白いかも」と教えてもらったのが、ライフ・コーチ(life coach)なる仕事に携わる、Deeと名乗る女性のwebサイトだった。
その中に『10 Important Lists to Write Before You Die』というタイトルのページがある。10の項目は以下の通り(訳は自己流で)。

「死ぬ前に書くための大切な10のリスト」

  1.     最も助けてもらった人・影響を与えてくれた人10人
  2.     忘れがたい10の場所
  3.     これまでに作った物 トップ3
  4.     自分にとって本当に意味のある日 トップ5
  5.     最良の友だち 10人
  6.     すばらしい旅行 トップ5
  7.     喜びを与えてくれた所持品 トップ10
  8.     最高の作品:本・映画・TVシリーズ トップ5
  9.     最高の贈り物 トップ5
  10.     望んでいながら行動に移さなかった10のこと

このリストは、ある90代のクライアント(相談者)からの依頼でその人物の人生を振り返り、記憶をたどる過程から生まれたという。
〈死ぬ前に書く〉けれど、法律上の遺書のように「相続」とか「財産分与」の項目はなく、一見したところワーク・ブックのイメージだ。

作者が挙げる『10のリスト』の特徴は、「年齢に関係なく書けること」、「いつでも修正したり加筆できること」。
項目を見れば、若くても取り組むことができるし、また経験を積み重ねた上で書き直しもできる内容であることがわかる。

実際に取りかかってみるとその作業は、これまでの人生を思い出すことに他ならない。
けれど、このクライアントの要望は「自分の生きた証」を記録することだけではなかったという。読んだ人がそこから学ぶ何かがあるかもしれない、つまり子孫への「遺産の一つ」として残したいと。

10番目、「望んでいながら行動に移さなかった10のこと」の解説にはこうある。

10.…the idea is not to get sorrowful and look at regrets or lost opportunities. This is to be a list of things that others could do well to take note so that they too do not miss out. It can also be an opportunity to express hidden dreams and talents, you never know, it may not be too late to do at least one of them!

(これは悲しみに浸るためでも、後悔や失ってしまった機会に向き合うためでもありません。他の人も見逃さないように書き留めておく方がよいリストであるべきです。それはまた、今まで眠っていた夢や才能を表出させるきっかけとなる可能性もあります。少なくともそのうちの一つくらいはまだ間に合うかもしれません!)

それを書き出してみることによって現状と、更なる目標を認識する。これからの自分のため、そして、次を繋ぐ人たちへのヒントにもなるというわけだ。

ところで、10のリストは「ヒト」「場所」「旅」「モノ」「出来事」に及んでいる。ただそれぞれの注釈を読むと、たとえそれが「モノ」であっても、そこから「ヒト」との関わり合いに踏み込んでいることがわかる。

例えば3及び9の項目について。

3.It does not matter whether it is simply a shelf you put up or a flower garden you planted or maybe a meal you cooked. Give yourself recognition for having contributed in some way.

(それはあなたが作った棚や花壇、もしくは料理であるかもれませんが、単にそのものが重要なわけではありません。自分がどのように、何の役に立てたのかを評価してみましょう)

9.Try to recall not only the gift but also who gave it to you and why it was one of the best for you.

(もらった物を思い出すだけでなく、それをくれた人が誰だったのか、そして、それがなぜ最上のプレゼントとなったのかも思い出してみましょう)

人間はひとりでは生きていけない。助けられ支えられて互いが存在している―。
このリストに沿って文章をしたためる作業は、そんな仏教の教えにも通じるような境地に至る道行きなのだろうか。

これまでの歩みを見つめ直し、関わってきた人たちに思いを馳せる。区切りのいいこの時期にそんな時間を持つのもいいのかもしれない。

前向きな遺書?『死ぬ前に書くための大切な10のリスト』()

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柿ノ木坂ケイ プロフィール

プロフィール

1964年生まれ。東京都立大学人文学部社会学科社会人類学専攻卒。タウン情報誌編集部を経てフリーライター。 3年前義母をなくし、お墓がない現実に直面。購入まで苦労したことがきっかけとなり、意外と知らなかったお墓について調べ、著書『間違いだらけのお墓選び』をまとめる。
現在、「明るくわかりやすくお墓を語る」をモットーに、消費者の立場から見た“お墓”についての講演や関連記事の執筆などで活動中。

【 著書 】

『間違いだらけのお墓選び-買ってわかったお墓事情あれこれ』
2005.11刊/情報センター出版局(1400円+税)

〔第1部:お墓購入ドタバタ体験記〕

年齢も趣味も違う家族が一つのものを買うのは大変なこと。
ましてやそれが“お墓”であればモメるのは当然?!著者と家族の笑える(?)お墓探しの日々を綴る。

〔第2部:お墓に関する49の基礎知識〕

誰もがいつかはお世話なるものなのに、よくわからないもの、それがお墓。その購入の実体験をもとに「これだけは知っておきたい」という知識をまとめた。イラストやフローチャート入りで“初心者”にも楽しくわかりやすく、お墓選びのツボを伝える。