この世もあの世もイヌと共に

イヌが飼いたい。どうしても。子供の頃は、一緒に散歩をしたり遊んだり。友だちがもう一人いるようだった。だけど今、夫がそれを許さない。これまで散々言い続けてきたけれど、何度かイヌに噛まれたことのあるらしい夫は頑として受け付けない。作戦変更。イヌの良さがわかる本をそれとなく読ませよう!

早速ネットで検索した1冊を取り寄せてみた。『星守る犬』(村上たかし作コミック)。今年夏、TV番組『王様のブランチ』で紹介された頃から売れているようだ。通販サイトに書き込まれた書評が80近くもあって驚く。

話は、山中に放置された車から中年男性とイヌの亡骸が発見される場面から始まる。そこに至るまでの、せつない二者の旅が描かれていく。内容は読んでいただきたいが、男性と一匹の「お墓」は、ある人の計らいでいい感じになることだけ触れておく。

イヌと飼い主とお墓。
『日本書記』にはこんな話が記されている。豪族に仕えた兵士、捕鳥部万は、戦いに負け、逃げた先で朝廷の兵士30人以上を殺した末に自害する。朝廷がその死骸を八つ裂きにすることを命ずると、万の飼犬が現われ、主人の首を食いちぎって墓に納め、その場所を離れることなく死んでしまった―。

戦乱の世の話でかなり勇ましくはあるが、飼犬が主人を助け、寄り添う様は今も昔もさまざま伝説・物語として語られている。

さらに逆上って縄文時代。特に後期の遺跡では、イヌと人間がごく近くに埋められているのが発見されている。今時、「ペットと一緒」とうたったお墓は人気なわけだけど、共に埋葬された過去があったのだ。
猟犬・番犬として飼われていたこの時代。残された骨から、中には怪我をして治ったイヌがいることがわかった。人間がその治癒に関わった可能性が高い。歳を取ったイヌが多く、寿命をまっとうしている=人間に大事にされていたことも推測できるという。

ところが、弥生時代になると農耕社会となったため、猟犬としての役割がなくなり食料とされることもあった。平安・鎌倉時代では武士が行う競技「犬追物」の標的となった。江戸時代、権力者が大型犬を飼うことは、その権威を示すことでもあった。将軍徳川綱吉が定めた『生類憐れみの令』では過剰なまでに保護されるものの、その一方で、イヌを「食べる」習慣もまだ残っていた。

いろいろありながら、時を経て付き合ってきたイヌと人。
今日では、『星守る犬』の「おとうさん」にとってもそうだったように、何かとせちがらい世の中にあって常に態度が変わらない飼犬は、唯一心のパートナーだったりする。
「犬はいつだって待っていますから―」。本に出てくるこのセリフは、ペットとして飼った人にはわかるその特質を現している。

そんなワンちゃんをわが家にも迎えたい。
それなのに手渡した本を読み終えた夫は、「イヌ好きな人の話だね。こんなイヌめったにいないでしょ」と宣った。
間違いは早めに訂正しなくては。「いやいや、一般的にイヌというのは人間の気持ちをくみ取って、・・・(続く)」。

ああ面倒くさい!理屈でわかってもらうのは難しい。こういう輩にイヌと一緒に過ごす喜びを教えるには、実際目の前に連れてくるのが最も早い方法なのかもしれない。まずはともあれ付き合ってみないことには。

この世もあの世もイヌと共に()

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柿ノ木坂ケイ プロフィール

プロフィール

1964年生まれ。東京都立大学人文学部社会学科社会人類学専攻卒。タウン情報誌編集部を経てフリーライター。 3年前義母をなくし、お墓がない現実に直面。購入まで苦労したことがきっかけとなり、意外と知らなかったお墓について調べ、著書『間違いだらけのお墓選び』をまとめる。
現在、「明るくわかりやすくお墓を語る」をモットーに、消費者の立場から見た“お墓”についての講演や関連記事の執筆などで活動中。

【 著書 】

『間違いだらけのお墓選び-買ってわかったお墓事情あれこれ』
2005.11刊/情報センター出版局(1400円+税)

〔第1部:お墓購入ドタバタ体験記〕

年齢も趣味も違う家族が一つのものを買うのは大変なこと。
ましてやそれが“お墓”であればモメるのは当然?!著者と家族の笑える(?)お墓探しの日々を綴る。

〔第2部:お墓に関する49の基礎知識〕

誰もがいつかはお世話なるものなのに、よくわからないもの、それがお墓。その購入の実体験をもとに「これだけは知っておきたい」という知識をまとめた。イラストやフローチャート入りで“初心者”にも楽しくわかりやすく、お墓選びのツボを伝える。