「娘に墓を継がせたい」?

先日の、お墓に関する勉強会でのこと。一通り購入の際のポイントなどをお話した後、参加者からこんな質問が出た。
「娘にお墓を継がせることはできますか?」
これからお墓を買いたいという60代男性からだった。

お墓や仏壇は「祭祀(さいし)財産」といって、受け継ぐのは原則一人。分割して引き継ぐ、土地や家などの「相続財産」とは区別される。
ところで、明治民法下の家督相続が頭にあるのか、私たちは「お墓は長男が、男子が継ぐもの」という意識を漠然と持っていたりする。
でも法律上においても、女性が継ぐことに問題はない。

現在の民法によれば、お墓の承継者は
1.「前使用者による指定(口頭、遺言など)」がまず優先され、それが無ければ
2.「慣習に従った判断(話合い)」で。それでも決まらない場合は
3.「家庭裁判所が判定」することになっているが、性別についての制限等は示されていない。

また法律とは別に、各霊園・墓地には通常、決まり事をまとめた『使用規則』がある。その中で承継者について、例えば「親族に限る」となっていることはあっても、「女性は不可」などという記述はまだ見たことがない。

ところが法的にはクリアでも、実際にあるお寺で、娘の継承を嫌がられたという話を聞いたことがある。

女性は他家へ嫁ぐことがある。その場合、「姓が変わる」「相手が長男ならそちらのお墓も夫婦で継ぐことになる」などの可能性が考えられるというわけ。また現実に、結婚後他所へ移ることでお寺から足が遠のくことが間々あるという。
つまりこのお寺としては、「女性」を、檀家としては不安定な存在と判断してのことなのだろう。
お布施はお寺の経営を支えているから、檀家はその役割を認識していないと、とは思うけれど、この少子化時代にある意味贅沢な発言ではある。

お寺もいろいろ。寺墓地を検討する際は、ぜひ、そこのご住職と会って直接話をしてみることをお勧めしたい。住職は企業でいえば社長にあたる。その考え方次第で、墓地の運営方針が決まるという存在だ。「承継者」といった諸条件もその場で確認を。
これから長いお付き合いとなることを考えると、そのお人柄も知っておきたいところ。

そんなことを交えて回答した後、「お墓を買う前に、娘さんにも一度ご相談されてはいかがでしょう?」とご提案をした。

購入希望の墓地はお参りする場所としてどうか。宗教的な条件について、などなど。寺墓地であれば、一般的に戒名はその宗派に限定される。法要もそのお寺で、という枠があるかもしれない。

お墓は自分だけのものでなはない。
「子供に迷惑をかけたくない」「子供の負担を減らそう」と自分の代でお墓の購入を検討したとしても、今後継承していくことを考えれば少なくとも次の代の意向にも耳を傾けておきたい。

「娘に墓を継がせたい」?()

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柿ノ木坂ケイ プロフィール

プロフィール

1964年生まれ。東京都立大学人文学部社会学科社会人類学専攻卒。タウン情報誌編集部を経てフリーライター。 3年前義母をなくし、お墓がない現実に直面。購入まで苦労したことがきっかけとなり、意外と知らなかったお墓について調べ、著書『間違いだらけのお墓選び』をまとめる。
現在、「明るくわかりやすくお墓を語る」をモットーに、消費者の立場から見た“お墓”についての講演や関連記事の執筆などで活動中。

【 著書 】

『間違いだらけのお墓選び-買ってわかったお墓事情あれこれ』
2005.11刊/情報センター出版局(1400円+税)

〔第1部:お墓購入ドタバタ体験記〕

年齢も趣味も違う家族が一つのものを買うのは大変なこと。
ましてやそれが“お墓”であればモメるのは当然?!著者と家族の笑える(?)お墓探しの日々を綴る。

〔第2部:お墓に関する49の基礎知識〕

誰もがいつかはお世話なるものなのに、よくわからないもの、それがお墓。その購入の実体験をもとに「これだけは知っておきたい」という知識をまとめた。イラストやフローチャート入りで“初心者”にも楽しくわかりやすく、お墓選びのツボを伝える。