火葬研究協会 武田至先生に聞く その1. ~皆で見る火葬~

昨今、お葬式が簡素化・小規模化する中、火葬場の在り方は変わるのだろうか?そんな疑問がわき起こり、日本の火葬場について、火葬研究協会の武田至先生に話を伺ってみた。

今、お葬式をしないで火葬だけ、という「直葬」が増えています。その場合、火葬炉の前で読経だけをあげることもあるようですが、ということは火葬場の役割がますます重要になってくるのでしょうか?

そうですね。ただ、もともと火葬場はそういう場所だったんですよ。

ウチの田舎は新潟ですが、古くから野焼き場がありました。葬礼場(ソウレバ)とか昇魂場(ショウコンジョウ)と呼ばれていて、昭和30年代まで使っていたようです。
人が死ぬと自宅から葬列を組んで、野辺送りでここに行く。そこに僧侶が来て最後の読経をしていた。同じ施設で葬儀と火葬をやっていたんですよ。
そんな、地域コミュニティでもある野焼き場が集落ごとにあり、最後に葬儀をやっていました。つまり火葬は葬儀の一部だったんです。

また新潟のように火葬の習慣があった地域とは別な所でも、明治の初めに伝染病が流行したときに、その対策として火葬場が造られたんです。それらの施設は炉があるだけの簡易な建物で、その場合火葬場は「焼く」だけでした。
徐々に葬儀は他の場所で行われることが増えましたが、最近の直葬などで言えるのは、再び火葬場が本来の姿に戻ってきているということでしょうね。


なるほど、新しい葬送のスタイルと思われた直葬だけど、その場所だけで送別行為をしていることを考えれば、火葬場はかつての役割を取り戻したことになる。
先生に、何本かの柱が立っているだけの野焼き場の写真を見せていただいた。

壁や屋根がありませんよね。たぶん神聖な場所と言うことで、結界を表していると思います。相撲の土俵と同じですね。
ここで、地域住民が集まって火葬するわけです。
日本の火葬というのは、インドの流れを汲むものなんです。
インドでは、遺体を燃やすところを見ますよね。その後骨を拾ってカンジス河に流したりします。


「皆で見る」のが、日本を含め、アジア型の火葬スタイルです。それは、人が亡くなったことを受け入れるには非常にいいシステムだと思いますね。

一方、ヨーロッパでは、公衆衛生の問題や、土葬より墓地の面積を取らないという合理的観点からスタートし、各地で火葬の推進運動が起こりましたが、宗教上の理由からなかなか広まりませんでした。
ただ、科学が発達してくると、復活信仰があっても「人は死んだら生き返らない」と心のどこかに抱く人も出てきますよね。それならばその死をきちんと見届けたいとして、欧米でも火葬に立ち会いたいという人は増えているんです。


以前の、日本の火葬場の写真を拝見すると、お寺のような建物に煙突が付いている、なんだか銭湯のようなタイプも。これに比べると、近頃建てられる火葬場はその規模の違いだけではなくて、見た目が美しく、しかも煙突がどこにあるのかわからない建物がほとんどと変わってきていますね。

従来、日本では葬儀が仏式で行われてきまして、それを火葬場内でやりますからそこに本尊を置いて読経をして、ということで、建物もお寺風の外形になったんです。戦前はこういうタイプの火葬場がたくさん建てられました。
それが、戦後、公共建築物には特定の宗教的要素を入れてはいけないということもあり、このようなデザインは廃れていきます。
また高い煙突があるのがいかにもそのイメージとして定着したため、「なるべく火葬場らしくない」デザイン化が進んでいったんです。周辺の住民への配慮・対策もあって、ガラス貼りですとか、火葬場を明るく見せようというタイプがどんどん造られるようになったんですね。

ただ、火葬場の中身はどこも同じだろうと、デザインだけに走ってしまう例もあります。使い方や本来の目的を考えずに「見た目」重視の建物はかなりあるんですよ。火葬場の場合、間取りを考えることも結構重要なんですが・・・。

(次号につづく)

火葬研究協会 武田至先生に聞く その1. ~皆で見る火葬~()

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柿ノ木坂ケイ プロフィール

プロフィール

1964年生まれ。東京都立大学人文学部社会学科社会人類学専攻卒。タウン情報誌編集部を経てフリーライター。 3年前義母をなくし、お墓がない現実に直面。購入まで苦労したことがきっかけとなり、意外と知らなかったお墓について調べ、著書『間違いだらけのお墓選び』をまとめる。
現在、「明るくわかりやすくお墓を語る」をモットーに、消費者の立場から見た“お墓”についての講演や関連記事の執筆などで活動中。

【 著書 】

『間違いだらけのお墓選び-買ってわかったお墓事情あれこれ』
2005.11刊/情報センター出版局(1400円+税)

〔第1部:お墓購入ドタバタ体験記〕

年齢も趣味も違う家族が一つのものを買うのは大変なこと。
ましてやそれが“お墓”であればモメるのは当然?!著者と家族の笑える(?)お墓探しの日々を綴る。

〔第2部:お墓に関する49の基礎知識〕

誰もがいつかはお世話なるものなのに、よくわからないもの、それがお墓。その購入の実体験をもとに「これだけは知っておきたい」という知識をまとめた。イラストやフローチャート入りで“初心者”にも楽しくわかりやすく、お墓選びのツボを伝える。