生きている間にやっておきたいことはありますか?

先月発売の読売ウイークリー(10.12号)で、30~50代の男女500人へのアンケート調査『あなたが宣告されたら・・・余命半年どう生きるか?』の記事を目にした。

自分の命があと半年と告げられたと仮定しての質問、「生きている間にこれだけはやっておきたいことはありますか?」には、68.2%の人が「ある」と答えている。その内容としては「世界一周」「家族旅行」「宇宙へ行く」などの旅関係。まだまだ働き盛りの世代でもあり、「家を建てたい」も何人かが挙げている。「子供が欲しい」または「遺伝子を残したい」とダイレクトに表現する人。
「身辺整理」とか「家族に手紙を書く」は確かに自分の死期がわかっていないとなかなかできないことだ。
その一方で、「人助け」「人間として立派になる」は、今すぐにでも始められそう。「小説を書く」「喫茶店を開く」「起業」なども、そんな状況下ではなくてもできそうだけど、と思わせる。不景気なこのご時世に思い切ったことはできない、あと半年の命とわかれば生活費を心配する必要がなくなるので、そこから夢を実現したい、ということかもしれない。

ところでこのアンケート、最近余命わずかという設定の映画やドラマが目に付くことから行ったとか。例として秋元康の小説『象の背中』や、映画『最高の人生の見つけ方』などが挙げられている。なるほど、言われてみれば、緒形拳の遺作となったTVドラマ『風のガーデン』、コミック『イキガミ』などがすぐに思い浮かぶ。

余命が判明することから始まるこうした作品は、人間の最期を描きながら、生きることの意味を問いかけている。

今秋、映画も封切られた原作コミック『イキガミ』の舞台は「国家繁栄維持法」=“国繁(こくはん)”が制定されている架空の国。この法律のもとに、子供たちは小学校入学とともに全員がある注射を受ける。そして注射器に入れられた「ナノカプセル」によって、1000人中1人が18~24才までのあらかじめ決められた日時に死亡する。選ばれた人間は「逝紙(いきがみ)」と呼ばれる役所からの予告証によって初めて自分の理不尽な運命を知る。その死のたった24時間前に。残される家族に何かを遺す者。今まで踏み出せなかったことに決着をつけようとする者。タイムリミットを迎えるまでのそれぞれの一日を追ったストーリーが展開する。

この国の法律“国繁”の目的は、このように死への恐怖を植えつけることで、国民に命の尊さを実感させることにある。
すべてがありえないコト、空想上のでき事とわかっていても、登場人物の1人、逝紙を配る役所の課長が口にする「国繁がなければ『生命の価値』すら認識できない―そんな社会にこそ問題があるんじゃないか」(『イキガミ』第3巻)というセリフは、どこか現実社会に触れているようでドキリとさせられる。

『イキガミ』が設定する恐怖社会は誰もが否定し、御免だと思うだろう。
だけど死期がわかることでしか本気で自分の生と向き合えないのだとすれば、想定されたその世界には勝てない。命の限りを知った時点で初めて大事なコトに気づくというのはもの悲しい。

前掲アンケートの「生きている間にやっておきたいこと」の質問に、「親孝行」や「大切に思う人とじっくり話す」の回答も見られた。
メールのやりとりに頼って直接会うことにためらいがちな昨今だけど、日々の生活の中でせめてそんな機会はたくさんつくりたいと感じる。

生きている間にやっておきたいことはありますか?()

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柿ノ木坂ケイ プロフィール

プロフィール

1964年生まれ。東京都立大学人文学部社会学科社会人類学専攻卒。タウン情報誌編集部を経てフリーライター。 3年前義母をなくし、お墓がない現実に直面。購入まで苦労したことがきっかけとなり、意外と知らなかったお墓について調べ、著書『間違いだらけのお墓選び』をまとめる。
現在、「明るくわかりやすくお墓を語る」をモットーに、消費者の立場から見た“お墓”についての講演や関連記事の執筆などで活動中。

【 著書 】

『間違いだらけのお墓選び-買ってわかったお墓事情あれこれ』
2005.11刊/情報センター出版局(1400円+税)

〔第1部:お墓購入ドタバタ体験記〕

年齢も趣味も違う家族が一つのものを買うのは大変なこと。
ましてやそれが“お墓”であればモメるのは当然?!著者と家族の笑える(?)お墓探しの日々を綴る。

〔第2部:お墓に関する49の基礎知識〕

誰もがいつかはお世話なるものなのに、よくわからないもの、それがお墓。その購入の実体験をもとに「これだけは知っておきたい」という知識をまとめた。イラストやフローチャート入りで“初心者”にも楽しくわかりやすく、お墓選びのツボを伝える。