白い霊柩車とデジタル映像の「祭壇」

先月、葬祭業者103社の出展イベントに出掛けた。

葬祭業というと、ついしめやかな雰囲気を想像するが、オシャレな生花祭壇あり、音楽葬向けの生演奏ライブありと華やかささえ感じる。もちろん、それぞれの製品やサービスをアピールする場とあって、普段目にしない棺やら骨壷がいくつも並べられているブースもあり圧巻である。

そんな中、まず目に付いたのは、入り口近くにドドーンと置かれた全長7.5mの白いリムジンだった。この会場からしてもしや霊柩車?宮型タイプの人気が落ちたのは知っていたけど、白?!

出展していた会社では、10年程前から白い霊柩車を売り出したそうだ。営業の方に話を聞いた。
「今、ウチでは同じ洋型の黒より需要が高いです。地方の方がかえって人気ですよ。女性の運転手だったりするとエレガントでしょ?」
確かに黒のリムジンは「マフィアを連想する」というと少々古いかもしれないけど、いかにも重厚だ。それに対して、どちらかというと「白」は女性的なイメージだろうか。

それにしても、なぜ白?
「今、生花祭壇でも白が注目されてますよね。もともとお葬式の色は白だし、」営業マンはここで一度言葉を切り、続けた。「それに一見、霊柩車だってわからないでしょう?」
日本の喪服の色は元来白だったけど、近代に入って黒へと変わった。だけどそれを霊柩車の色と結びつけるのは、いかにも後から考えられたことだと思った。
白い霊柩車が登場したのは、だぶん後半の言葉が主な理由なのだろう。
現代において葬儀を象徴する「黒」を避けて、「白」が使われる。それはエンドユーザーである私たちのニーズも反映されてのことだ。

そこを離れて奥に進むと、あるブースで人だかりがしている。
前面に、花に囲まれた棺。簡単な台の上に遺影が飾られている。そしてその後ろには、横いっぱいに広がる「屏風」。漆塗りで黒く縁取られた4つの液晶画面で、渋い墨絵の花鳥風月が動いていた。

この葬儀用のデジタル屏風、『Byobu』を造ったのはNINO株式会社。PCソフトで加工したどんな映像も自在に使えることが特徴だという。例えば故人の思い出の映像や、ちょっと遊び心を持って好きなアニメも(著作権が許せば)葬儀で流せるわけだ。
使い方はともかく、遺影だけを残し、祭壇、またはその代わりに映像を見せるという提案が新鮮だった。

会社代表の楡井さんによれば、この2日間で、葬祭場を持つ数社から早速引き合いがあるなど、反応は上々だとか。

「祭壇」と言われると、ひな壇になった最上段に寺院の建物のようなものが載っていて、それぞれの段には遺影や位牌、燈籠や行灯があり、果物やお菓子が供えられていて、というものを思い浮かべる。
ところがそういう仏式の、いわゆる白木のタイプは、広い会場を見渡しても1社の展示しかない。

数種の花や、造花をアレンジした祭壇が2社ほど。祭壇用の長持ちする特殊な花を開発した企業もみられた。また、ロウソク製造の会社がキャンドルで演出する祭壇を出していた。
遺影と棺を中心として、花やキャンドルだけで飾るこれらの祭壇は、白木のひな壇に比べると威圧感はなく、白い霊柩車と同じく華々しさとソフト感をかもし出す。無宗教葬への志向が高まる中、映像を使ったものも含め、いろんな見せ方が可能で個性を出しやすい面もあるのだろう。

各社の商品を見学しながら、ちょっとずつ変わってくる葬儀を目の当たりにすることができた。そして、「いかにも葬儀」「いかにも死」を表すものをなるべく見せないように、という風潮がますます強くなっていることを感じた一日でもあった。

白い霊柩車とデジタル映像の「祭壇」()

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柿ノ木坂ケイ プロフィール

プロフィール

1964年生まれ。東京都立大学人文学部社会学科社会人類学専攻卒。タウン情報誌編集部を経てフリーライター。 3年前義母をなくし、お墓がない現実に直面。購入まで苦労したことがきっかけとなり、意外と知らなかったお墓について調べ、著書『間違いだらけのお墓選び』をまとめる。
現在、「明るくわかりやすくお墓を語る」をモットーに、消費者の立場から見た“お墓”についての講演や関連記事の執筆などで活動中。

【 著書 】

『間違いだらけのお墓選び-買ってわかったお墓事情あれこれ』
2005.11刊/情報センター出版局(1400円+税)

〔第1部:お墓購入ドタバタ体験記〕

年齢も趣味も違う家族が一つのものを買うのは大変なこと。
ましてやそれが“お墓”であればモメるのは当然?!著者と家族の笑える(?)お墓探しの日々を綴る。

〔第2部:お墓に関する49の基礎知識〕

誰もがいつかはお世話なるものなのに、よくわからないもの、それがお墓。その購入の実体験をもとに「これだけは知っておきたい」という知識をまとめた。イラストやフローチャート入りで“初心者”にも楽しくわかりやすく、お墓選びのツボを伝える。