遺灰で樹木を育てる壺

遺灰で樹木を育てる壺
 
樹木の元に遺骨を埋葬するお墓のスタイル〝樹木葬〟が、ジワジワと人気を高めていますが、「遺骨(遺灰)が樹木を育てる」という発想から生まれた商品が販売されています。
 
開発したのは、スペインのEstudimolineというデザイン会社。
 
「Bios Urn」は、椰子殻、泥灰、セルロースで作られた大き目のシェイクの容器といった外見で、二重構造になっています。
その上部のカップに木の種子と土、下部のカップに遺灰を入れ、土中に埋めます。いわば下が骨壺でその上に植木鉢を載せたような格好です。すると数日中に種が発芽し、木になっていくとのこと。
種は松、いちょう、カエデ、オーク、アッシュなどから選べるようです。
 
気になるのは、実際にそれをどこに埋めるかです。
 
販売サイトではこの点について、「可能性のある墓地がいくつかある。最寄りの役所などに相談を」としています。
 
金額は145USD+送料で、「世界中どこへでも発送」とありますが、例えばこれを日本国内で使うとしたらどうでしょう。
 
日本では、お墓に関する法律「墓地、埋葬等に関する法律」通称『墓埋法』が定められています。
その中の第2章第4条では、「埋葬又は焼骨の埋蔵は、墓地以外の区域に、これを行ってはならない」とあります。つまり、遺灰を収めたこの容器を、自宅の庭や近辺の公園などに勝手に埋めることはできないということになります。
 
現在、墓地の種類としては運営主体別に1.公営霊園 2.民営霊園3.寺院墓地があります。
1.公営霊園 2.の民営霊園では今のところ、この壺を埋められそうな所は思い当たりません。3.寺院墓地では、樹木葬墓地があるお寺さんとの相談で許可をいただけるところがあるかもしれませんが、場所は限られるでしょう。
 
日本に限らず、先進諸国のほとんどでは、遺体・遺骨を埋められる場所が法律で定められているため、誰もが自由にとこでもこのBios Urnを使えるとはいきませんが、まったくその可能性がないというわけではありません。
 
例えば、ノルウエーでは、墓地以外の埋葬・散骨について、法律に従い登録された教会によって管理される墓地で行うと決められている一方、「故人を海底または野外に埋葬する場合は自然の墓として考慮される」と余地も残しています。
 
また韓国では2008年に関連法が制定され、遺骨を樹木や花草の元に埋めることを「自然葬」と定義。その自然葬地の造成は、宗教グループや法人の他、個人・家族・門中(親戚関係)などでも申告制、つまり許可が出れば可能となっています。
 
ある程度各自が好きな場所に遺骨を埋めることができるノルウエー方式。法の下、個人でも申告すれば可能となる韓国式。皆さんはどちらがいいとお考えになるでしょうか? あるいは好き勝手な埋葬が難しいという日本の現状がやはり望ましいでしょうか。
 
 
柿ノ木坂ケイ
 

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柿ノ木坂ケイ プロフィール

プロフィール

1964年生まれ。東京都立大学人文学部社会学科社会人類学専攻卒。タウン情報誌編集部を経てフリーライター。 3年前義母をなくし、お墓がない現実に直面。購入まで苦労したことがきっかけとなり、意外と知らなかったお墓について調べ、著書『間違いだらけのお墓選び』をまとめる。
現在、「明るくわかりやすくお墓を語る」をモットーに、消費者の立場から見た“お墓”についての講演や関連記事の執筆などで活動中。

【 著書 】

『間違いだらけのお墓選び-買ってわかったお墓事情あれこれ』
2005.11刊/情報センター出版局(1400円+税)

〔第1部:お墓購入ドタバタ体験記〕

年齢も趣味も違う家族が一つのものを買うのは大変なこと。
ましてやそれが“お墓”であればモメるのは当然?!著者と家族の笑える(?)お墓探しの日々を綴る。

〔第2部:お墓に関する49の基礎知識〕

誰もがいつかはお世話なるものなのに、よくわからないもの、それがお墓。その購入の実体験をもとに「これだけは知っておきたい」という知識をまとめた。イラストやフローチャート入りで“初心者”にも楽しくわかりやすく、お墓選びのツボを伝える。