なぜ日本人は宇宙葬で39/200人を占めるのか?

去る4月28日、米ニューメキシコ州より世界各国200人分の遺灰を載せたロケットが打ち上げられた。
一旦高度約113kmの無重力空間に達した後、地球に戻る。遺灰の入ったカプセルは遺族の元へ返されるそうだ。

この“宇宙葬”を主催した米のSpace Service社では、他にも月への散骨や、地球の廻る軌道上に載せ何年間も周回させる本格的なものまで、いくつかのサービスを提供しているが、今回は遺灰が地球に戻ってくるタイプ。いわば遺骨のプチ宇宙旅行版、といったところか。

以前は「本格的」な宇宙葬で、7g・100万円(税別・日本の代理店を通した場合)だったが、今回はその量が1gと少ないこともあってか料金は1人分495ドル(約5万9千円)と、お手頃価格だった。

ちなみにJTBが企画する(生きた人間のための)「宇宙体験旅行」は、3日間の集中訓練の後、全行程1~2時間程度、滞在時間5分で1224万円。
生きている間に行くか、死んでから行くかなどと比較するのは不謹慎な気もするが、遺灰になってからの方が(1gだけど)かなりお安く「宇宙への旅」が叶うことにはなる。

ところで、今回の宇宙葬でチョット気になったのが、日本人が39人だったこと。39/200人、全体の約20%を占めることになる。

この企業の過去4回の宇宙葬で、日本人申込者は初回(97年)0名、2回目(98年)1名だったものの、マスコミ報道などで国内での認知度が上がるにつれ3回目(99年)10/34名、4回目(01年)14/50名と3割近くを示している。
今回、どの国から何人の申し込みがあったか定かではないが、初回の打ち上げの際は25ヶ国から問合せがあったという。(「中日新聞」97.10.23)

日本人が宇宙葬の2割、3割に上る。
その一つの要因に、99%を超えるという、他国に比べて高い火葬率が挙げられる。宇宙葬は今のところ遺体ではなく、遺灰のみ受け付けているから、その意味で需要は高いことになる。

そしてもう一つは、遺骨に対する日本人の思い入れ、なのかもしれない。

火葬された故人の骨を、参列者が2人1組となり、長い箸を使って拾い骨壷に収める。
・・・我々にはおなじみの風景でも、この「骨あげ」の儀式に欧米人はかなり違和感を覚えるという。
アメリカでは火葬の間、関係者が待っていること自体が珍しく、その後遺灰を郵便(!)で送ってもらうケースもあるとか。

『世界の葬式』(新潮社)の著者、松濤弘道氏はかつてニューデリーで飛行機が墜落した際、日本人犠牲者の慰霊のお手伝いとして現地に赴いた。
日本人の遺族がすぐに駆けつけ遺体や遺品を求める一方、65名の外国人遺族のほとんどが、その地に来ることはなかったという。

「一般に欧米人は(中略)ギリシャ思想やキリストの考え方によって、人間の肉体は霊の閉ざされた器と考え、死後それが解放されて精神の世界に昇天すると信じられている。遺体や遺骨は単なる霊のぬけ殻である物体にすぎないと考えるから、それらを畏敬の念をもってあがめることをしない。」(前書p.22)
死者を軽んじるということではなく、死の考え方が根本的に違うのだ。

同じアジアでも、インドのヒンドゥ教徒なら、遺灰をガンジス川に流すことがステイタスであることはよく知られている。骨は残すことなく流され、墓も造らないという。

一方、日本では、仏教徒なら一般的には弔い上げとなる33年(地域・宗派によって異なる)を迎えるまで遺骨を故人の代わりとして扱う。
そんなことも含め、私たちの遺骨に対する考え方は、どうやら他の国、民族から見たら必ずしも「標準的」とは言えない様だ。

海外で行なわれた宇宙葬で日本人が全体の20%に達したのは、家族形態の変化や葬儀・お墓の選択肢が増えたことなども背景として考えられる。
その上で、他国に比べ、より強い「骨への想い」というものが映し出されたように思う。

「宇宙に葬られたい」「死んだら自由な空間に飛び立ちたい」という意思を持っていた人、あるいはそんな亡き人の願いを叶えてあげたいと申し込む人。
そこには、本人、遺族にかかわらず、遺骨を故人同様大切に考える、日本人ならではの姿が見え隠れしている。

なぜ日本人は宇宙葬で39/200人を占めるのか?()

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柿ノ木坂ケイ プロフィール

プロフィール

1964年生まれ。東京都立大学人文学部社会学科社会人類学専攻卒。タウン情報誌編集部を経てフリーライター。 3年前義母をなくし、お墓がない現実に直面。購入まで苦労したことがきっかけとなり、意外と知らなかったお墓について調べ、著書『間違いだらけのお墓選び』をまとめる。
現在、「明るくわかりやすくお墓を語る」をモットーに、消費者の立場から見た“お墓”についての講演や関連記事の執筆などで活動中。

【 著書 】

『間違いだらけのお墓選び-買ってわかったお墓事情あれこれ』
2005.11刊/情報センター出版局(1400円+税)

〔第1部:お墓購入ドタバタ体験記〕

年齢も趣味も違う家族が一つのものを買うのは大変なこと。
ましてやそれが“お墓”であればモメるのは当然?!著者と家族の笑える(?)お墓探しの日々を綴る。

〔第2部:お墓に関する49の基礎知識〕

誰もがいつかはお世話なるものなのに、よくわからないもの、それがお墓。その購入の実体験をもとに「これだけは知っておきたい」という知識をまとめた。イラストやフローチャート入りで“初心者”にも楽しくわかりやすく、お墓選びのツボを伝える。