| ◆ column 3. 誰と入りますか? ―2つの共同墓の例から― |
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2006.12.01
中高年の女性たちが、契約者の名前が刻まれたクリスタルボードの前で次々と焼香。
オレンジ色のバラを一本ずつ供え、手を合わせている。
敷地には芝生が敷き詰められ、中央に、納骨室となっている筒型のまっ白い大理石。ここが墓地ではなかったら、何かのオブジェと見間違うかもしれない。
先々月、都内府中市の霊園の一画に建つ、ある共同墓を訪ねた。
この墓を運営するのは、女性の自立を支援するNPO法人「SSSネットワーク」。
SSSはシングル・スマイル・シニアライフの略。
1998年、ノンフィクション作家の松原惇子氏が立ち上げた。
会が、この共同墓を建てるにいたる契機がチョット面白い(いきさつは松原氏著書『シングル・スマイル・シニアライフ』に詳しい)。
松原氏と数名の有志は、当初、現在一人暮らしをしている女性たちがいずれ高齢になったときに共に暮らせる“シニアハウス”造りを模索していた。
いろいろな問題でその目標が頓挫したとき、松原氏の頭にある考えが浮かぶ。
それは、「最後に行き着くところは、シニアハウスでも老人ホームでもなければ病院でもない。お墓よ」(同書p.94)だった。
この究極の“終の棲家”のため、その後驚くべき行動力で自分たちのイメージに合った霊園を選び出し、デザインを決めていく。
こうして2000年、会員のためのお墓は誕生した。
現在は6名がすでに納骨され、契約者は165名にのぼるという。
「夫や家族に頼らず生きる」というSSSネットワークの趣旨に賛同し、この墓を気に入って申し込むのは、独身女性とは限らない。
夫と死別でひとりというケースもあるが、「自分の最後は自分で準備したい」「夫の家の墓には入りたくない」というような既婚者も含まれる。
“家”がベースとなっている一般のお墓は、結婚していてもいなくても、女性にとっては結構面倒なものだと思う。
ちなみに「夫婦が同じ墓に入るべし」、などという法律はもちろんナイ。
そして、嫁ぎ先のお墓には入りたくない、という女性は珍しくもなんともない。
05年鰍ュらしの友が行なった『団塊の女性の葬儀観』という調査では、夫の実家の家のお墓に入ってくれと言われた場合どうするか、を質問している。
結果は・よろこんで入りたい25.8%・やむを得ず入る36.6%・拒否する37.6%。
「入らない」という回答が約4割だ。
はたして、夫と一緒に入るのがイヤなのか、夫の実家のお墓がイヤなのかは定かではないが、そう考える女性は少なくないことがわかる。
取材に行った日は、年一回の追悼会が行われていた。
「お墓でパーティーしましょう」をコンセプトにお墓の契約者のなかの有志が集まり、亡くなった方の追悼と自分たちの交流を持つ。
普段は顔を合わせない人たちだけど、「いずれ同じお墓に入る」という意識があるのだろうか。
知らない人でも、話しかけたり自己紹介したり。お互いを尊重しながら、ひとときを楽しんでいた。
お洒落をした参加者たちがこうして集まる場に私もお邪魔していて、寒い一日だったけど、ほんわかした気分になった。
お墓が取り持つ縁というのも何だか悪くない気がした。
話しは変わるが、今年夏、海の向こうドイツで、サッカーの名門クラブ・ハンブルガーSVがサポーターのための共同墓造りを計画しているという記事を見た。
場所は、スタジアムメーンゲートの約15m横。
小さなスタジアムを模した墓になるという。
さすがサッカーの歴史が違う。あの世でもサポーター同士連れ立って応援するのだろうか。
試合を見にきた人々がお参りしてくれそうだし、寂しくないかも。
“お墓”って形状だけじゃない。
「誰と入るか」なんてことも重要だと思う。
そして、この2つの共同墓は、その点で新しい風を感じる。
一般のお墓では、血縁関係が中心になるけど、共同墓では他人同士っていうことが多い。
入り口としては宗教だったり地域性だったり。
だけどこの2つのお墓の場合、そのいずれでもない。申込者たちの共通項は唯一「生き方の価値観」のようなものだったり、「好きなサッカーチーム」だったりする。
こういうお墓は、当事者にしたら案外、「入るのが楽しみ」と思えるのかもしれない。
ところで、日本でどこかのスポーツチームファンのための墓はあり得るだろうか。
まっ先に思い浮かべたのは“阪神タイガース”。
老若男女問わず、生活にまで浸透した応援ぶりと、あのノリ。もし共同墓を造っても申込者は結構いるのではと思う。
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